〇◆混ざりあい-Orange ページ29
・
トントン、
「福本入りまぁす、」
部室のドアには「会議中」のプレートがかかってたけど、
誰がおるかは分かってるから
ノックをしたらそんまま中に入る。
そしたらやっぱり、いつもの場所でもう見慣れた座り姿。
多分、俺が入ってきたんも分かってへんぐらい
真剣にパソコン叩いてる。
傍にはサンドイッチの空袋とよく飲んでる抹茶オレのペットボトル。
よし、ちゃんと昼飯食うてる。
結「〜……♪」
お、鼻歌歌ってるやん。めずらし。
調子よさそうやから声かけるの遠慮しとこ、ってことで
視界に入らへんぐらいの椅子に座ったら、
自分のパソコンを取り出す。
12時50分過ぎ、もうすぐ3限が始まる時間やな。
この時間までおるってことはユキさんも次は空きコマやろし、
俺もあとは5限だけやから、しばらく作業できそう。
さて、頼まれてた校正始めますか。
首を軽く回したら最近買ったブルーライトカットのメガネをかけて
パソコンに集中した。
・
結「……ふぅ、」
視界の端っこでユキさんがゆっくり肩を回したのが見えて顔をあげる。
一段落したんかな。
ってか今何時？
おぉ、もう15時やん。
だいぶ集中してたおかげで
誤字とか気になるとこはあらかた確認が終わって、
俺も一休みしようかなぁってマネして背伸びしてみる。
結「大晴くん、校正？」
「はい、ユキさんが一段落したら聞こうかなぁって思って、」
結「ごめんね、いるのには気づいてたんだけど
ちょっと集中してた」
「いや、いいっすよ。
多分そうやろうなぁと思ってましたから(笑)」
もういつものことやし、
なんならお互いのパソコン叩いてる音が聞こえてくんのが
逆に落ち着くまである。
なんか、仕事やってんなぁって感じするやん(笑)
俺の返事聞いて安心したように笑ったユキさんが
ちょいちょいって俺を手招きする。
「え、なんすか(笑)」
結「いいから」
もう、なに？
めっちゃかわえぇんやけど。
誘われるまんま近づいてパソコン覗いたら、
脚本が映った画面の端っこに「終」の字が入ってて。
え、これってつまり、
「終わったん？」
結「ふふっ……うん、」
「え、マジか！完成したん！？」
ガッと振り返ったら
にっこり笑ったユキさんが頷く。
え、ほんまやな？見間違いちゃうよな！？
「やったぁー！ユキさんお疲れさまっ！」
結「まぁ、まだ校正も確認もあるけど」
「そんなん後々！まずは喜ばんと！」
結「きゃぁっ」
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作者名：マリア | 作成日時：2023年10月22日 2時
