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交差点で立ち止まった正門先輩が、背中をかがめて私を覗き込んでくる。
目をぱちくりした私が、先輩の瞳に映ってる。
良「あん時のエリーちゃん、
めっちゃ綺麗やったで」
「……へ、」
“綺麗”だなんて、多分生まれてから一度も言われたことない台詞に
戸惑いが止まらない。
良「スポットライト浴びて、
自信持って笑ってる姿が、今までで1番綺麗やと思った」
そんな、
綺麗だなんて言葉はきっと、
今、目の前にいる正門先輩にこそ似合う言葉で。
私なんて、
……いや、違う。
良「あ、……いきなりごめん、こんなん、」
「正門、先輩」
自信なさげに俯いてた視線をあげて、正門先輩を見つめる。
素直に、受け取る。
今の私なら、きっとできる。
「もし、……正門先輩がいなかったら、
私、とっくに諦めてました。
今日の私が、自信を持って見えたのなら、
それは、正門先輩があの時、自信をくれたからです。
だから、私を引き留めてくれて、
……本当に、ありがとうございました！」
深く頭をさげたら、
「え！？ちょ、えぇよえぇよ！」って頭の上で慌ててる声がする。
そうだよね、いきなりこんなこと言われても困るよね。
だけど、不思議と気分はすっきりして。
顔をあげたら、
眉をさげた正門先輩が髪の毛を掻いて笑った。
良「……まさか、そんな真剣に受け取ってもらえるとは
思うてへんかったから。
綺麗とかいきなり言うて、ビックリさせてもうたと思った……」
「そ、それはビックリしてますけど。
でも、……嬉しいです」
恥ずかしかったけど、素直にそう伝えたら
正門先輩がちらっとこっちを見てから目を逸らした。
良「嬉しい、か。
……そう受け取ってもらえたら、言うた方もこんな幸せないのにな」
「え、」
呟くように、ぽつりと出た言葉は
少し寂しそうに夜に溶けて。
今、どんな表情をしてるんだろう。
ねぇ、正門先輩。
こっち向いて。
伸ばしかけた手より先に、先輩が振り返った。
良「あぁ、あかんあかん。俺酔うてるわ(笑)
はよ送って帰って寝なな。
ほら、エリーちゃんいくで」
へらりと笑って歩き出す正門先輩の背中を見つめる。
どうして、
あんなに寂しそうな声してたんだろう。
もう聞けない質問と、
伸ばせなかった手を握りしめる。
……まだまだ、だなぁ。
もっと恋上手になりたい。
そしたら、正門先輩の寂しさにも
きっと手が届くのに。
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作者名：マリア | 作成日時：2023年10月22日 2時
