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―あ、観覧名簿まだ書いてへんやろ？
よかったら書いてくれへん？―
「あ、全然いいですよ！」
「ごめんなぁ、統計取ってんねん」って
申し訳なさそうに太めの眉さげて受付に案内してくれる。
大晴くんもそうやけど
演劇部の人ってみんな優しいよなぁ。
あ、この間の部長さんはちょっと怖めやけど。
「高校生って学校名書いた方がえぇですか？」
―あぁ、えぇよ。高校生で。
ってか高校生やったんやなぁ。
大人びてるから分からんかったわ―
「よく言われます(笑)」
―誰か知り合いおるん？―
「あぁ、はい。けど、今日は大晴くん観に来たんで」
―あ、大晴？
ほんならすぐ出てくると思うで。
待っとく？―
気さくにそう言うてくれるから
そんならお言葉に甘えて待たせてもらう。
きょろきょろしてみても
Aちゃんの姿は見えへん。
裏方手伝いしてるんかなぁ？
『土曜の夜公演、観に行けそう！』って送ったLINEは
しばらく既読もつかへんまんまで
一昨日の夜、急に
『遅くなってごめん！土曜の夜ね、分かった！』って
返ってきたと思ったらまた音沙汰なし。
絶対なんかあったやろって
早よ顔見たくてしゃーないのに。
―あ、小島くん写真撮ってぇ？―
―はいはい、お並びくださいやす―
―私も！―
しばらくして出てきた衣装姿の役者さんたち、
特に主役やってた人らは出待ちみたいに女の子に囲まれて
写真撮影とかお願いされてる。
すごいな、アイドルみたいやって思って見てたら、
とんとん、
優しく肩を叩かれて振り返る。
結「晶哉、」
「Aちゃん！……あれ、ちょっと痩せてへん？」
俺を見上げて微笑んでるAちゃんのほっぺたが
少し薄くなってる気がして、
ぺちぺち触ってみる。
うん、間違いなく痩せてる。
「なんかあったん？」
結「んー、……ちょっと馬鹿した(苦笑)」
目尻をさげてそう笑ってるけど、
その表情は1年前の音信不通後にちょっと似てて
不安になる。
ぎゅーしたいけど、今は我慢して
手をぎゅって包み込んだ。
「大丈夫なん？」
結「うん、今はもう平気。
返信遅くなっちゃってごめんね、晶哉心配してるかもとは思ってたんだけど」
「心配した、
またAちゃんボロボロになってへんかなって」
結「んふふ、ありがとう。
晶哉は本当に優しいね、」
そうやで、Aちゃんだけな。
言わんけどそういう気持ちこめてほっぺたを撫でた。
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作者名：マリア | 作成日時：2023年10月22日 2時
