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誠「……まぁ、言いたいことは分かるわ。
倒れるまでやることちゃうし、
それを把握できてへんかった、俺らにも責任はある」
誰もおらへん舞台を見ながらそう言った誠也くんは、
「けどな、大晴」って言葉を続けた。
誠「学祭公演がどんな公演か、知ってるか？
1年で1番おっきな公演で、4日間続く長丁場や。
お客さんぎょーさん来る。
OBも、他の学校の演劇部も、劇団関係者やって来るような
そういう公演なんよ。
色んな人が色んな思いで俺らの公演を観に来る。
そんな公演に思い入れもない脚本で、お前勝負できるか？」
「それは……、」
まっすぐこっちを向いた視線に、何も言葉を返せなかった。
誠「今年こそ特別やけど、
本来、学祭公演の脚本はコンペで集めて、
プレゼンして、バトって勝ち残ったものが選ばれる。
それやからみんな納得する。
その熱量に応えたくて必死に頑張るんや。
ユキはな、今、その熱量を1人で背負ってるんやで。
とんでもないプレッシャーを感じながら、
それでも俺らが自慢して背負える話つくろうって頑張ってんねん。
大晴。
脚本ってのはそういうポジションなんやで」
誠也くんの言葉のひとつひとつが胸に刺さった。
下心から始まった、俺の演劇部としての全部が
甘いって言われてるような気ぃして。
そんなんじゃ、ユキさんに手なんか伸ばせへんぞって
言われてるみたいで。
誠「……やり方は間違ってるし、不器用やけど、
全てを注ぎ込んで脚本に向き合ってるユキの気持ちを、
「頼むわ」って頭をさげられて、
昨日の『ジュエリーゼ』のことを思い出した。
時間がなかったとか、めちゃくちゃ揉めてたとか
そんなん全部吹き飛ばすような、
先輩らの熱がこもった舞台。
ユキさんが、つくりたかった舞台の世界。
俺も、つくってみたい。
「……誠也くん、
俺、本気出しますわ」
頼りにされへんのなら、頼りになる男にならなあかんねん。
甘いって言うんなら、もっと本気で、
気持ちがまっすぐ届くまで、本気で。
演劇も恋愛もやらな。
誠「最初から本気ちゃうんかい」
「あ、」
正論突かれて、言葉が出ぇへん。
誠「まぁえぇわ。
……言うんやったら、本気見せろよ？大晴」
ニヤッと試すように笑った誠也くんを
まっすぐ見つめ返す。
「はい！」
よっしゃ、こっからが正念場や。
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作者名：マリア | 作成日時：2023年10月12日 22時
