・ ページ31
・
結「……その話、
菊好ちゃんと、眞鍋ちゃんを見て思いついたの」
「え、」
結城ちゃんの告白に、思わず顔があがった。
結「2人とも、初めて会った時から美人で、かわいくて、
いいな、こんなに女の子を楽しんでて素敵だなって
ずっとそう思ってた。
だけど、女の子はいつだって女の子じゃいられない日もあって、
そういうめんどくさい気持ちと向き合いながら
それでも女の子は楽しいよねって話を書きたくて。
2人が宝石みたいにキラキラしてたから
『ジュエリーゼ』って題名にした」
「結城ちゃん……、」
こんな美人な子が、そう思ってたなんて。
私が心のどこかで感じてたしょうもないコンプレックスなんて
軽く吹き飛ばされた。
この話は、結城ちゃんが
私のために書いてくれた話やったんや。
そう思ったら、急に涙が出るくらい
この話が愛おしくなって、脚本を大事に抱きしめた。
結「この脚本いいねって巽先輩も言ってくれてた。
けど、酒寄君にはあんまりよく思われなかったみたいで。
『この脚本は面白くない』
『女が脚本書くから、こんなつまらない物語になるんだ』って
そう、言われて……」
「はぁ！？
酒寄のあほ、今すぐ連れて来い！
一発殴らな気が済まへん！」
眞「性根が腐ってるとしか言いようがない、どクズね」
お腹の底からふつふつ湧いてくる怒りと、
多分、それをずっと言われながら
必死に堪えてた結城ちゃんへの悔しさやら、愛しさやら、悲しさやら
もう何か分からへん感情で
気付いたら涙が零れてて。
結「ごめんなさい……っ。
私が、もっと強ければ。
酒寄君の脚本に意見ができれば
菊好ちゃんも、眞鍋ちゃんも
みんなも嫌な思いすることなかったのに。
ごめんなさい、本当に、ごめん、なさい……っ」
涙を流しながら頭をさげた結城ちゃんの
バラバラになった髪の毛が揺れた。
こんなに追い詰められてたんや、
自分の髪の毛を、こんなんして。
この子は、優しすぎる。
そんな子に、私はどうしてもっと声がかけられへんかったんやろう。
僻みとかどうでもいいこと気にして、
なんで、「大丈夫？」ってその一言が言えへんかったんやろう。
この子は、そんな惨めな私のことを
宝石みたいやって、思ってくれてたのに。
「ごめ、ん……結城ちゃん、
謝るんは、うちの、方やっ」
止まらへん涙のまま、
結城ちゃんをきつく抱きしめた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 176人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：マリア | 作成日時：2023年10月12日 22時
