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菊「それで？
もしそれで酒寄がどうにかなるとして。
新入生公演はどうなるん？
私は正直、もう、あの作品では芝居したない」
眞「私も、それは同じ」
あんな下品な話、2度とやらへん。
まなぁちゃんと声を揃えたら、
まっさんは机の上に封筒をそっと置いた。
良「何も言わんと、
これを読んでみてほしい」
菊「……これ、脚本なん？」
良「そう、感想は後で聞くから」
そう言われて、封筒から中身を取り出したら
丁寧に整えられた脚本が人数分出てきて、
表紙には
『ジュエリーゼ 作・結城A』って
ユキの名前が書いてあった。
これ、結城ちゃんの書いた
興味が湧いて1ページ目を捲った瞬間から
すぐ、物語の世界に否応なく引き込まれてしまった。
“ねぇ、どうしてエリはそんなに気が弱くて
なんでもかんでも「はい」「はい」「はい」
エリの気持ちはどこにあるの？
女の子は誰だってお姫様なんだって、
そう思わないと人生がもったいないわ。
花の盛りは短いのよ”
“で、でも私、そんな……。
エリーゼさんみたいに美人じゃありませんし、”
自由気ままに女の子を愉しんでるエリーゼと
気弱で内気なエリの2人の女の子が出会って、
時にはケンカしながら
メークも、ショッピングも、女子会も
女の子を存分に謳歌しながら大人になっていく話。
酒寄の話とは全然違くて、
文字がもう、台詞を話してるみたい。
演じたい景色がどんどん浮かんできて。
まなぁちゃんはエリが似合う、
最後に自分とは何かを語るシーンが、まなぁちゃんの方が絶対いい。
やったら私はエリーゼや。
どんな風に演じよう？
メークはちょっと赤が強めにして、衣装は色んな種類着たいなって
脚本何度も見直しながら
イメージを膨らませてたら、
良「どう、キク子ちゃん？」
「めっちゃえぇ！最高よ！
結城ちゃんすごいでこんなん書けるなんて」
興奮した勢いそのまんま
ユキの手を握ったら、
ユキはびくって怯えたように肩を縮ませて、
眞「キク子ちゃん、気持ちは分かるけど落ち着いて。
結城ちゃん、ビックリしてるから」
「あ、ごめんごめん」
宥めてくれたまなぁちゃんの顔も
キラキラしてて、絶対気に入ったんやってすぐ分かった。
他のみんなも
読み終わった脚本の表紙を満足げに眺めてて
おんなじ気持ちやって。
やっぱり、みんなそうやったんやって胸が熱くなった。
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作者名：マリア | 作成日時：2023年10月12日 22時
