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・side.Kikuko
テストが終わって、
いよいようちらの新入生公演が始まる！って気合い入ってた矢先、
あがってきた脚本を見て、思わず「はぁ？」って
低い声が出たんは、自分でもよぅ覚えてる。
なに、この下品な深夜のお色気番組みたいな
始まりも終わりもないようなくだらへん話。
隣に座ってた同じ役者組のまなぁちゃんもそう思ったらしく、
目を合わせた自分らの顔は、めっちゃ顰めてた。
酒「これで決定ってことでぇ、みんなよろしく！」
「はぁ、ちょい待ちや酒寄。
この脚本誰にオッケーもらった訳？」
酒「はぁ？
そんなん3年の先輩らに決まってるやん」
眞「ちゃんと読んでもらったの？」
酒「3年の先輩は俺の才能買ってるから。
『俺の好きにしていい』って言うてくれたんで」
「……ふざけぇ、
ちょっとアンタ。
結城ちゃんはこれでえぇの？
アンタかて脚本出したんやろ？」
酒寄の後ろで俯いて突っ立ってたユキは
ほんまエリーに似てて、自信がなさげで
というより、脅されてる人質みたいで。
酒「あ、コイツの作品は論外やからえぇって(笑)
全然、演劇とは何かとか分かってへん話やったし」
「ほな、明日からこれで稽古やからぁ」って
先輩らとご飯行くって上機嫌に出て行った酒寄を見て、
思わず舌打ちが出た。
眞「……正門君、どう思う？」
浪人同士で話が合うらしいまなぁちゃんが
まっさんに話を振る。
まっさんはしばらく黙った後、
良「……結城ちゃんは、これでえぇの？」
ってユキの方を見た。
その時のユキは、今思ったら泣きそうな顔してたのに、
私は自分の気持ちばっかりが先行してて
ハッキリせぇへんでイライラするな、とか思ってた。
あの時、気づいてあげられたらよかったのに。
・
それから始まった稽古でも
酒寄はデカい態度を取り続けて
自分らで演出もしたいからって先輩を稽古から追い出したかと思ったら
我が物顔で仕切り出して、
酒「おいキク子ぉ、そこはもっと胸だしぃや。
この舞台の目玉やで？
正門クンはもっとそこで襲いかからな。
男やろぉ？」
日に日に増えてくハラスメント紛いの演技指導に
ほんまに腹が立って、
まなぁちゃんと話して
うちらは2人、もう退部も辞さない覚悟で部活をボイコットした。
そうやって1週間ぐらいが経ったある日、
まっさん部室に集まってほしい。酒寄は抜きで。
まっさんからそう言ってLINEが届いた。
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作者名：マリア | 作成日時：2023年10月12日 22時
