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何が何やら分からないままキク子先輩に連れてこられた部室には
使いっぱなしの演劇部のPCが置いてあって、
菊「お、ちょうどええやん！これ使わせてもらって……、」
手慣れた様子でファイルを開いたキク子先輩は
変に上機嫌で、
手元を見たら、マウスを触る手が少しだけ震えてた。
健「何の芝居見るんすか？」
菊「んー？幻の新入生公演ってやつ？(笑)」
大「幻、」
菊「そうそう、去年のね。
まぁ、平たく言えばうちらの黒歴史よ(苦笑)」
苦笑いでそう言ったキク子先輩は
あるファイルを開いた。
健「『みつばちハチ子の空飛ぶ恋』？
えらいダッサいタイトルやなぁ、コント？」
菊「言っとくけど、見たらもっとひどいで」
淡々と言い切ったキク子先輩が再生ボタンを押したら、
練習風景みたいな稽古場の動画が始まって。
最初から、少しだけ違和感があるというか、
なんだろう、このちょっと、嫌な感じ。
“ねぇこっち見てよぉ、こっち。このたわわなぁ”
“うっわぁ、もっと見してぇなぁ”
健「……下品な話やな」
「うん、全然、……」
先輩たちの作品にこんなこと言っちゃ
絶対ダメなんだろうけど、
面白くない。
話もまとまってないし、
品がないお色気みたいなシーンがいっぱいあって
キク子先輩も眞鍋先輩も正門先輩も織部先輩も
いつものお芝居みたいな感じじゃなくて。
むしろ、すごく、嫌そう……。
菊「嫌な話やろ。
うちらも嫌で嫌でしゃーなかった。
あ、別に色気あるシーンが嫌やったとかちゃうよ？
ユキの書いた『欲動』とか
最高に滾ってたしね(笑)
やけど、この話はそういう意味もなくて、
ただただ消費されるだけの色気を求められてる気がして、
ほんまに不快やった。
ちなみにこれ、脚本が出してきた衣装案な」
健「どれ……、なんやねんこれ。
まるでキャバレーやん」
「こんな露出させて、誠也先輩いいって言ったんですか？」
菊「もちろん却下されたで？
せやけど、露出は欠かせへんってその脚本は食い下がってな」
大「っていうか脚本って
そこまでしゃしゃれるんすか？
演出やって衣装やって専属いるでしょ」
菊「そうやで。
そうなんやけど、ソイツ……酒寄って言うんやけど、
ソイツはまぁ、色々目立ちたがりの口出したがりでさ。
酒寄のせいで、うちら部活ボイコットしたんよ」
「ボイコット？」
菊「そう、部活に全然出てこぉへんかったん(苦笑)」
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作者名：マリア | 作成日時：2023年10月12日 22時
