▼◆第8回新入生公演『ジュエリーゼ』 ページ26
・side.Ellie
『夏バケ』のリハーサル1日目は
結城先輩が倒れたこともあってみんなどこかそわそわしてたけど
なんとか大きなミスはなく終わって。
だけど、昼休みが終わるぎりぎりで
こじけんくんに連れられて帰ってきた大晴くんは
傍からでも分かるくらい落ち込んでて、
午後のリハーサル中も何度も誠也先輩に怒られてた。
阿「大晴、ほんまに大丈夫なんかな？」
恩「休憩中に何があったんだろうね」
これからバイトらしい阿南くんと恩田くんと話しながら
ホール棟を下りる。
阿「ま、大晴の分まで俺らがしっかりしよな。
エリーもすっかり女優やし！」
恩「そうだね、この10日ぐらいで一気に集中力も演技力もあがったもんね。
正門先輩と何話したの？」
「え、その、アドバイス、的な」
恩「的な？」
「えへへ……、」
言えない、
正門先輩のコスプレが見たいがために頑張ってるなんて決して言えない！
頑張ってぎぎぎ、って笑ってたら
優しい恩田くんはそれ以上は何も言わないで、
阿「ほんなら、俺ら帰るわ。エリー、明日な！」
恩「お疲れ、エリーちゃん」
「うん、2人とも気をつけて」
手を振って別れたら、
菊「エリー、」
「あ、キク子先輩。お疲れ様です、」
目を腫らしたキク子先輩が近寄ってきて、
心配になって思わず駆け寄る。
結城先輩のことかな……。
「キク子先輩。結城先輩は、」
菊「さっき帰ったって。
正門がタクシー呼んで付き合ったみたい。
学祭公演の締め切近いから焦ってたんやろうな」
「あ、もう脚本は締め切りなんですね……」
脚本はいつも、私達のスケジュールより先に進んでるから、
忙しい時も私達とズレてて。
そういうズレがあるから、
きっと、周りから大変って分かりづらいんだろうな。
菊「大丈夫やって、ユキも新入生公演は見るって言うてたし！
2，3日安静にして美味しいもん食べたら
よぅなるよ。
あ、それよりエリー。今から時間ある？」
「え、あ、はい。あります」
空はもう夕暮れの色をしてる。
晩ご飯のお誘いかなぁ……？
菊「あ、大晴とこじけんおった！」
「おーい！」ってキク子先輩が手を振る先に
健「あ、キク子さんや」
ゆるく手を振るこじけんくんと、
ぼーっとした顔してる大晴くん。
菊「よかった、3人集まって。
ほんなら、行こか」
健「え、どこ行くん？」
菊「ん？部室」
「何しにですか？」
菊「演劇を見に、」
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作者名：マリア | 作成日時：2023年10月12日 22時
