◆共犯 ページ25
・side.Yoshinori
大晴がいなくなった後の空間に、沈黙だけ残された。
ちら、と横目に見たら
結城はぼーっとした目で寂しそうに、
少しだけ口角をあげて。
結「……頼れないんじゃなくて、頼りたくなかった。
でも、受け取る側したら、どっちにしろ一緒だよね」
「結城、」
結「傷つけちゃった……、大事にしたかったのに……」
そう言って窓の外を見る表情は
何を思ってるのか分からへん。
それでも、結城がはっきり「大事にしたい」って言うのは
俺ら演劇部くらいで
言葉の重みを知ってる結城にとって
大晴は本当に大事な存在やったんやろうから。
膝の上においた拳に力が入る。
菊「入っていい？」
扉から顔を覗かせたキク子に頷いたら、
ベッドに近づいてくる。
キク子の目も真っ赤になってて。
菊「大晴の大声、外まで聞こえてたんやけど(苦笑)」
「すまんなぁ、感情が高ぶってたらしいわ」
菊「でも、あんだけ素直に言葉をぶつけられるのは
大晴のえぇところやと思うわ。
あんたら2人見てたら、尚更」
唇をぎゅっと結びながら俺と結城を見たキク子は
少し怒ってるようで。
菊「……いや、それは今は関係ないな。
ごめん、余計な口出しやわ」
結「キク子、」
菊「ん？どうしたん、ユキ？」
結「ごめん……、『ジュエリーゼ』みたいにしたくなくて、
頑張ったんだけど……、ダメだったみたい」
その言葉に
キク子は目を大きくして、
菊「ユキ……、気づいてあげられへんで、ごめん……っ」
ぽろぽろ涙を流しながら、
結城を抱きしめた。
キク子に抱きしめられながら、
結城がぽつぽつと話し出した言葉に
俺は、何にも言えへんまま
最後まで聞き役をするしかなくて。
―一番隣におんねやから気づいて止めろよ！！―
大晴は、俺のこと詰ったけど
ほんまにその通りやと思う。
何やってんねん、俺も。
結「大晴くんに、嫌われそう……いや、もう嫌われてるかもだけど」
菊「ぐすっ……、大丈夫やって。
大晴はええ子やから、きっと分かってくれる。
ちゃんと言葉で伝えたらえぇんやで？」
結「そうかな……」
菊「うん、絶対そう。
うちも協力する」
結「……ありがとう、キク子」
菊「任せときって♪」
「じゃあ、うちリハに戻るから！」って涙の跡が残る顔で
部屋から出て行ったキク子。
結「正門は、怒ってる？」
「いや、……俺は結城と共犯やから」
怒る資格なんて、どこにもあらへんよ。
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作者名：マリア | 作成日時：2023年10月12日 22時
