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「正門、先輩……」
私の頭を撫でる正門先輩の手は暖かくて。
きっと、私は正門先輩の手が好きなんだろうなって。
変なの。
今、すっごく落ち込んでたはずなのに。
良「全力で俺らもサポートするから。
ただ、一旦本番の幕があがったら、
もう何があっても最後まで止められへん。
それやからギリギリまで考えてジタバタして
そんで本番一発の真剣勝負してんやで。
お客さんと、俺らと」
きらきらと輝く瞳が熱い。
正門先輩の本気が、手のひらから頭を伝ってくるみたい。
「私も……勝負、できますか」
自然と零れた言葉に、自分でも驚く。
そんな熱量、自分にあったんだって。
良「できる。
こじけんとも、大晴とも、阿南とも恩ちゃんとも
張り合って負けへんよ」
「本当ですか……？」
良「自分に自信ないって子が本気出したら
お！って思うやん。
それは、こじけんらにはないエリーちゃんだけの武器やで」
「私だけの、武器」
自信がないのが、私の武器。
初めての感覚、
そんなものが武器になるなんて。
だけど、そう言われたら少し自信がついてくる。
だって自信なんて少しも持ってないんだもん。
「……ふふ、」
良「え、どうしたん？」
「いや、……自分が自信がないことに自信があるって
とても、矛盾してるような気がして」
良「自信がないことが自信になるって、ん？
俺も言うてて訳分からんくなってきたな(笑)」
「ふふ、私も分からなくなってきました(笑)」
目が合ったらもっと可笑しくなって、
つい2人で笑っちゃって。
あ、久しぶりにこんな声出して笑ったかも。
ブーブー、
バイブレーションがしてスマホを見る。
こじけんくんエリー、今どこおる?戻って来れそうなら戻っておいで。
大晴くんみんなで飯食おうって、誠也くんの奢りやって←ここめっちゃ重要!!
阿南くん強調すな!
恩ちゃん阿南くん、そのツッコミ口から出てるよ笑
立て続けに送られてくる1年生のグループトーク。
こじけんくんと大晴くんの変顔が恩田くんから送られてきて、
阿南くんのキメ顔にこじけんくんが「最悪！」ってスタンプ押して、
これ、多分隣同士でこのトーク送ってるんだよね。
「みんな……、ありがとう、」
面白いのに、楽しいのに涙が出るって初めてのことだよ。
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作者名：マリア | 作成日時：2023年10月12日 22時
