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散々泣いて、泣き疲れて、
膝を抱えて小さくなって。
どうしたら、みんなに迷惑をかけないで辞めれるんだろう。
でも、今辞めたら新入生公演どうなるんだろう。
衣装どうなるんだろう。
そんなことばかり考えて。
なんて、私なんかいなくてもどうにでもなるよね。
みんなすごい人ばっかりだもん……。
「でも、楽しかったな……」
新歓で正門先輩に助けられて、
『欲動』を観て演劇部に入って、
同期のみんなや先輩たちに出会って、
衣装班に入って、
夏旅行も楽しくて、
誠也先輩とキク子先輩がすぐ口喧嘩するから
どっちにつけばいいか分からなかったことも、
こじけんくんと大晴くんがふざけるのを
阿南くんがツッコんで恩田くんと笑ってたのも、
大晴くんと一目惚れ同盟結成したのも、
みんなで海に行って、あだっちーちゃんと仲良くなったのも
正門先輩のことを、好きになったのも。
全部、全部、
初めてだったから。
こんな大学生活を送れるなんて、夢にも思ってなかったから。
だから、本当は、
良「エリーちゃん、みっけ」
顔をあげたら、正門先輩が優しく微笑みながら近づいてくる。
良「隣お邪魔しても？」
「……どうぞ、」
泣き濡れた顔を膝の上に隠したら、
「よっこいしょ」って座った正門先輩の体温が近く感じる。
「……ごめんなさい。さっきぶつかって、」
良「えぇよ。別にケガもなんもしてへんし」
「稽古、もう始まってますよね……」
良「どうやろうなぁ。
今頃、誠也くんに詰められてるかも知らんで？
うちのエリー泣かせたん誰や！って(笑)」
「そんなっ、……私が悪いんです。
身の程知らずに役者なんて引き受けたから、」
良「身の程知らずって、
そんな大したもんちゃうけどな、役者なんて」
けらけらと笑ってる正門先輩は
いつもと何も変わらない態度で。
だからますます、落ち込んじゃって。
良「エリーちゃんって真面目よな」
「そ、そうでしょうか……？」
良「掃除の時もこじけん達がふざけてる横でちゃんと掃除してるし、
打ち合わせの時も、エリーちゃんがメモ取ってくれるから
後で言うた言うてないってケンカするんが減ったって
キク子が感謝しとったで」
「……それは、全部私のためで、そんなたいしたこと」
良「エリーちゃんにとってはそうかも知らんけど、
それで助かっとる人は確かにおるから。
そこは自信持ってえぇとこなんちゃうかな」
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作者名：マリア | 作成日時：2023年10月12日 22時
