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香「……エリーちゃん、止めようか」
香坂先輩の溜息で稽古場が一気に緊張する。
香「考え事してた？眠かった？台詞思い出してた？」
椅子に座って見てた先輩が
ゆっくりこっちに近づいてくる。
怖くて、顔があげられない。
香「いいよ、それでも。
でも、それはできる人ならの話でさ。
エリーちゃん、全然できないじゃない。
集中したって間違えるじゃない。
何でよそ見できるの。
いい加減覚悟決めてやってよ。
このままじゃ新入生公演台無しだよ？
エリーちゃんの所為で、全部、」
健「香坂先輩、それは言いすぎっす」
こじけんくんが背中が香坂先輩との間に割り込んでくる。
香「……君達は、この子のことを庇い過ぎてると思うよ」
健「元々巻き込んだのも俺らですから」
大「そうです。エリーは裏方やったのに
俺らがサポートするからって役者入ってくれて。
やから、俺らに責任がある訳で、」
香「台詞がまだ完璧に入ってないのも、
声が飛ぶのも動きがぎこちないのも君達のせい？
結局は、自分が役者として腹据えないと
いつまで経ってもおんなじこと繰り返すだけだよ。
それは君達がいくらサポートしたところで、
どうにもならないところでしょ」
そう。
結局は、私の問題。
こじけんくんも
大晴くんも
阿南くんも恩田くんも
どんなに長い稽古の後で疲れてても、
私の個人練習に付き合ってくれて。
分からないことがあったら聞いてね、って言ってくれて、
こんなに、みんながしてくれてるのに
私は、全然できなくて。
私、やっぱりダメなんだ。
向いてないよ、分かってた。
なのに、どうしてあの時。
香「……一旦、休憩しよう」
もう、ここには居られない。
ガチャ、
誠「おっつー、うぉ！エリー！」
良「え、ちょ、どこ行くん！」
ドアの向こうにいた誠也先輩と正門先輩にぶつかっちゃって
押しのけるように上を向いた一瞬、
正門先輩と目が合ったけど
そのまま稽古場から飛び出した。
階段を駆け下りながら、苦しくて、涙が出てくる。
悔しい、
申し訳ない、
情けない、
私なんか、
私なんか、
やっぱり大嫌い、大嫌い！！
演劇なんて無理だったんだ。
私なんかが、入っていい世界じゃなかったのに。
「んん、うっ……」
息があがる、苦しい。
一階まで駆け下りたらベンチに倒れこむ。
「うっ、うっ………」
もう、無理だよ。
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作者名：マリア | 作成日時：2023年10月12日 22時
