〇夢現の残り香-Blue. ページ8
・side.Yoshinori
「あら、こじけんは……？」
「1人じゃ怖いぃ♡」とか散々に絡まれて
わざわざコテージまで戻ってきたのに、
トイレから出たら当の本人はおらんようなってて、
「えぇ……」
置いてけぼり？
うそん。
一応見てみよ、って玄関覗いたら、
「あら？」
見覚えのある女物のサンダルがあって
慌てて部屋の扉開けたら、そこにはやっぱり、
「なんでここにおるん？……結城」
結「正門、」
何故かこじけんと大晴のベッドの間から
ぼんやり俺を見あげる結城。
もしかして、ちょっと酔ってる？
近づいてよぉ見たらほっぺも赤なってるように見えるし。
「酔うてんの？」
結「うん……、そうかも知れない」
「なにぃ、分からへんの？」
髪の毛を撫でてあげながら隣にしゃがみこんだら、
アルコールのせいか目を潤ませた結城と目が合った。
結「ねぇ、正門、」
「ん？」
結「……なんであの時キスしたの？」
「え、いつの話よ」
結「『欲動』の千秋楽の後」
一瞬どきっとしたのがバレへんように
「あー、あん時なぁ」とか適当に考えるフリして目を逸らす。
「けど、何で今更そんなん気になったん？
俺ら割とちゅーしてる気ぃすんねんけどなぁ」
しれっとそう言ってみたら、
「それは、そうだけど」って恥ずかしそうにシーツに顔を埋めてる。
ほんま、かわえぇな。
ついついにやけながら結城の言葉を待ってたら、
結「……だって正門、唇にキスしないから」
「そうやっけ？」
結「うん、だから……そういうことなんだろうなって、」
「そういうことって、どういうことなん？」
あぁ、あかんよな。
結城はきっとそれ以上は言わへんって分かってるのに
そうやって自分から誘導して、
結「それは、」
「俺には言われへんようなこと？」
結「そうじゃない、けど……」
結城を困らせて話を逸らしてまう。
「ごめん、意地悪やったな」
唇をツンと尖らせていじけてる結城の頭を撫でたら
やっぱ酔ってるんか、
いつもより子どもっぽい表情でちょっと睨まれた。
「かわえぇなぁ、ちゃんと仲直りしよ？」
華奢な身体を抱き寄せて、瞼に軽くキスを落とす。
良「俺は結城のこと大事に思ってるから。
そんだけやで」
「……そっか」
ぎゅ、としがみつくみたいに抱きついてくる結城を
隠してまうくらいに抱きしめる。
顔を寄せたTシャツの肩口から
結城の匂いやない香水の香りが微かにした。
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作者名：マリア | 作成日時：2023年10月3日 0時
