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結「どうした、の？」
俺を見るユキさんは、あくまでいつも通りで。
それが悔しくて腕の間隔をもっと狭めてしまう。
「ユキさん、……何ともないん？」
結「え、」
「俺やって一応、男のつもりやねんけど」
結「大晴、くん、」
「俺は今、正直ドキドキしてんで」
恥ずかしいけど、
腕もそわそわしてるし
こんな至近距離で見つめることなんてないから
心臓ドキドキしてる。
結「ドキドキは、してるよ……？」
「ほんまに？」
結「だって、大晴くん、思ったより筋肉あるから」
「だって鍛えたもん。
誰かさんに女の子と間違われたせいで」
結「誰かさん？」
「ユキさんは知らんでえぇ」
結「そっか、」
そう言って、少し伏し目がちになったユキさんが
ぼそっと呟く。
結「男の子、なんだよね。大晴くんも」
「え、」
そっと腹筋に伸びるユキさんの手が
ゆっくり腹筋の凹凸を撫でるから、
声が出そうになって、慌てて唇を噛んだ。
結「気持ちよさそう、」
「なに、が、」
結「大晴くんに、抱きしめられたら、」
「……今、やってもえぇっすよ」
ユキさんと目が合う。
酔ってるんか潤んだ瞳が俺を見て細くなる。
それが合図やと思った。
ユキさんを閉じ込めてた腕を離して
背中に回す。
正面から抱きしめたユキさんは
想像してたよりずっと柔らかくて、甘くて、
包み込むようにぎゅーって抱きしめる。
「気持ちいいっすか、」
結「……うん、あったかい」
俺の背中にユキさんの腕が回って
抱きついてくる。
え、どうしよ。
これってそういうことなん？
つまり、そういうことなん？
精いっぱいカッコつけてるけど、頭の中もうパニックで。
このまま、もしかして。
そんな妄想が過って、
少し間を取る。
俺がユキさんの顔を見た同じタイミングで
ユキさんも俺の方を見てて。
あ、今、チャンスなんかな。
ユキさんの頬に手を添えたら
ユキさんも俺を見てそっと顔を預けた。
あ、いける。
喉が鳴った。
顔を近づけたら、綺麗な唇に寄せていく。
え、ええんかな。
こんな、惰性的にキスなんかして。
これでええん？
でも、止まらなくて。
あかん、もうちゅーしてまう。
ガチャ、
健「トイレぇ、トイレ♪
あれ、誰かおるん？」
ご機嫌なこじけんの声、それと、
良「えぇん、ビールどこ行ってん……」
まっさんの声がして、
動きが止まって、
ユキさんと目が合った。
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作者名：マリア | 作成日時：2023年10月3日 0時
