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他愛のない話をゆっくりして
今日は最後まで起きたまんまアパートの前に車がつく。
誠「じゃあ、気ぃ付けてな」
「待って、誠也くん」
ずっと大事に持ってたものをバッグから取り出す。
「お誕生日おめでとう」
リボンがちょっとよれちゃった誕生日プレゼントに、
目を丸くした誠也くんは
へにゃって嬉しそうに笑った。
誠「……もう、くれへんのかと思った」
「そんな……、大切な日やもん」
誠「ありがとうな」
プレゼントから私に視線が移って、
ぽん、と頭に手が置かれる。
小さいって自分では言ってるけど
男らしくて、綺麗な誠也くんの手に
今日はちょっとだけ
くしゃっと髪の毛を崩されて。
誠「なぁ、A」
「ん？」
誠「好きなヤツ、おるん？」
「え、」
手の下から見上げる誠也くんの瞳は
少しだけ、切なく揺らめく。
誠「もし、Aが本気で恋してるんやったら、
それで俺がおるんが邪魔やったら、
……正直に言うてほしい」
なんて返したらいいのか、分からなかった。
唇が動くけど、
言葉は形になる前に消えて、
「誠也くん、」
誠「でもほんまは、」
言葉を遮った誠也くんの声。
髪の毛をそっと撫でた指先がくすぐったい。
誠「……行ってほしくない」
その、困ったように笑う顔が、
泣きそうなくらい綺麗で、優しくて、
「……行かないよ、」
自然にそう言ってた。
「どこにも行かない、
誠也くんの隣にずっといたい、」
例え、それが妹としてでも。
やから、そんな捨てられそうな犬ちゃんみたいな顔しないで。
頬に触れたら、
手に頬をすり寄せて誠也くんが微笑む。
誠「A、もし俺が、」
プップーッ！！
後ろからクラクションが鳴って、急に眩しくなる。
誠「あ、……くそ。タイミング悪いんちゃう」
「急いで降りなきゃ、」
バッグを持ってドアに手をかける。
誠「A、」
手の上に誠也くんの手が重なる。
背中に感じた体温は、いつもより熱くて。
誠「……」
「誠也くん？」
誠「……ないでもない、気ぃ付けて降り？」
「う、うん、」
プップー！！
誠「もううるさいって！」
いつもみたいにキャン！って叫んだ誠也くんに笑いながら
車から降りたら、
誠「じゃ、おやすみ！」
って急いで車は出て行った。
後ろをついて出て行った車がちょっとだけ恨めしい。
―A、もし俺が、―
その言葉の続きを、
少し期待してたから。
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作者名：マリア | 作成日時：2023年10月3日 0時
