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誠「A、」



名前を呼ぶ声が甘くて、

ほっぺがとろけそう。



誠「……ほんまズルいな、」



お手上げって困った表情してそう言った誠也くんは

ぽん、って頭を撫でて

そのままアロハシャツごと私を抱きしめた。


「誠也くん、」

誠「やっぱ俺やないとあかんねやんか。

 ほんまに手のかかる子やわ」

「んふふ、うん(笑)」

誠「うんって(笑)

 ……俺がどんだけ守ってるかAは知らんやろ?」

「えっ?」

誠「言っとくけど、俺はAの最強SPなんやからな」

「そうなの?」


ずっと耳元で誠也くんの声がして

いっぱい誠也くんの匂いがして

抱きしめられてる腕がちょっと苦しくて、

やけど嬉しくて。



誠「知らんかったやろ?」

「うん、でも嬉しい」

誠「もぉ、何やねん(笑)」


首に吐息があたって、くすぐったくて身体を捩ったら

誠也くんは笑いながら離れてくれた。


誠「俺に守られるってことは、

 今日は1日俺の傍におらなあかんってことやからな。

 離れたらあかんで?」

「うん!」

誠「ま、離れたところで

 こんなんつけてる子にちょっかい出してくるアホも

 おらんやろうけど」

「ひゃっ、」


首元を指でなぞる誠也くんに

恥ずかしい声が漏れて。


追いかけるように触ったら、さっきまでなかったチェーンの感触。



「誠也くん、これ、」

誠「お土産。夏旅行の」

「え?……わぁ!きれい!」


ピンク色の真珠がついた指輪がチェーンの先に繋がってて、

首元でキラキラしてる。


誠「海入る時は取ってな。錆びるから」

「いや!ずっとつけてたいからもう海入らへん!」

誠「それじゃ海来た甲斐ないやん(笑)」

「いいもん!」

誠「あぉもう、……ほんまズルいわ、A」


もう一度頭を撫でられて

そのまま流れるように手を繋ぐ。


誠「ほら、戻るで」

「うん、」



朝の憂鬱がウソみたい。


こんな幸せな気分になれるなんて。


ゆっくり歩く誠也くんの背中を見つめながら

胸がキュンキュンして。


このまま手が離れないといいのにな。



大「あっ、やっと帰ってきたぁ!

 先にお昼食べよ!焼きそばあんで!」

健「たこ焼きとどっちがえぇ、って、

 あだっちー、そんなんつけてたっけ?」

「うん、さっきつけた!」

健「ほぉーん……、誠也くん」

誠「やめろ小島、目だけでうるさいねんて」


ニヤついてるこじけんを鬱陶しそうに追い払う誠也くん。


その背中の後ろに隠れて、

こっそり手は繋いだまま。

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作品ジャンル:恋愛
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作者名:マリア | 作成日時:2023年10月3日 0時

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