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誠「A、ちょっとえぇか？」
準備したパラソルの下でみんなで話してたら
誠也くんの声がして振り向く。
アロハシャツに海パン姿の誠也くんは
なんだか怒ってるみたいで。
「う、うん、」
サンダルをつっかけて追いかけながら
なんやろうって緊張する。
あの日のことが過って、ちょっとだけ怖いな。
パラソルから少し離れた人気のない建物の陰で
誠也くんは立ち止まって振り返った。
「どうしたの、誠也くん？」
誠「……いや。なんでもない、けど、」
私と目が合って気まずそうに目を逸らした誠也くんは
髪の毛をぐしゃってしたら、急にアロハシャツのボタンを外しだして。
「え、え！？」
半分ぐらい外れた拍子に
割れた腹筋がちらっと見えて慌てて後ろを向いた。
なになになに！
こんなん聞いてない！
ドッキドキしながら誠也くんを待ってたら、
誠「これ、着とき」
誠也くんの匂いがして、
肩に誠也くんが着てたアロハシャツがかけられてた。
「誠也くん、これ、」
振り返ったら
誠也くんは耳を触りながら俯きがちに、
誠「……そんなん着てたら、悪い男に捕まんで」
「え、」
一気に体温がぶわってあがった気がした。
恥ずかしくて、嬉しくて、
アロハシャツの裾を握る。
「そんなことないよ……。
私、全部かわいないもん」
誠「はぁ？おまっ、それ分かって言ってるん？」
パッと顔をあげた誠也くんは
ちょっと呆れてて。
「だって！全然モテへんし」
誠「それは！……いや、うん。
ともかく！
Aはその……かわえぇから。
悪いヤツに捕まらへんように、それ着といて」
そっぽを向きながらアロハシャツを指差した誠也くんの耳が赤くて。
あっ、……いつもの誠也くんや。
そう思ったら急にほっとして
泣きそうになった。
「ねぇ、誠也くん」
誠「ん？」
「……もし、私が悪い人に捕まりそうになっても
誠也くんが助けてくれる？」
私の言葉に大きくなった目は
すぐ、ふっとそっぽ向いて。
誠「……俺でええの、」
「え？」
誠「他のヤツじゃなくて、えぇの？」
あの夜と似た台詞やった。
そう言えばあの時、私は返事ができひんくて。
だけど、今なら。
「……誠也くんがいい」
誠「A、」
「誠也くんやないとイヤ。
他の人じゃイヤやもん！」
少しだけ背の高い誠也くんをまっすぐ見上げる。
誠也くんの目が綺麗で
このまま吸い寄せられちゃいそう。
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作者名：マリア | 作成日時：2023年10月3日 0時
