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あんまりその声が
笑顔が、優しかったから。
つい、耐えきれなかった涙が伝う。
あかん、私最近泣き虫や。
健「ちょっと、移動しよか」
どんどん溢れてくる涙の止め方が分からない私の手を引いて
小島先輩が歩き出す。
暑くて、すぐお互い手汗で滑るようになったのに
手は繋いだままで、
駅横の小さな広場の木の下のベンチに並んで座った。
健「……謝らなあかんのは俺の方やで」
ぽつりと呟いた小島先輩が脚を伸ばす。
「なんで、」
小島先輩は悪いこと何もしてへんのに。
健「この間、水族館行った時によっしー泣かせてもうたやんか。
そんでよっしーが今でもそのこと引きずってるのが
何となく分かって、
やから、今日はこの間の分まで笑わせたらなって
頑張って、俺なりに色々したつもりなんやけど、
結局、また泣かせてもうてるし。
……頼りないって言われてしゃーないわ、これは(笑)」
話を聞きながら涙が少しずつ乾いてぱりぱりしてくる。
小島先輩、そんないっぱい考えてくれてたんや。
そう思ったら胸がいっぱいになって。
今、隣で寂しそうな顔させてしまってるのが嫌で。
どうしたらいいのか悩んで、
咄嗟にベンチについてた小島先輩の手を握ってた。
健「よっしー？」
「小島先輩、……ありがとうございます」
もう泣いてない顔見せて、精いっぱい笑ってみせる。
「いっぱい考えてくれて、ありがとうございます。
お店も調べてくれて、帽子もプレゼントしてくれて、
とっても嬉しかったです。
だから、
……私が大学合格したら、恩返しさせてください。
いっぱいお出かけして、美味しいもの食べて
お買い物しましょう。
私、もっと勉強頑張りますから」
今は無理やけど
一緒の大学に行けたら、絶対今日の倍、気持ちを返すから。
そう決意をこめて手を握る。
小島先輩はじっと私を見て、
それからぽん、と握られてない方の手を帽子の上に置いた。
健「……じゃあ来年、2人でまた出かけよな。
今日買った帽子、2人で被って」
「はい、」
そっと撫でられた頭があったかくて、
深く頷いた。
・
それからゲーセン行って2人であほみたいに騒いで
プリクラまで撮って
外に出たらもう夕方で、
小島先輩に駅まで見送られて別れた。
帽子とプリクラと、
帰り際にもらった大宰府の御守と。
今日の思い出は両手にいっぱいあって、
大事に大事に、全部を抱きしめた。
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作者名：マリア | 作成日時：2023年10月3日 0時
