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「あ、あの、これは、」

健「うーん……、ちょっとおっき過ぎるなぁ。

 次、こっち」

「いや、あのだから、」


どうして、私が帽子をとっかえひっかえされてるんでしょうか?


聞こうにも小島先輩がすごく真剣な顔してるから

声をかけるタイミングを完全に失ってしまって。


そうこうしてたら、また新しい帽子を被せられる。


健「……これ、えぇな。

 よっしー、鏡見てみ」


小島先輩に誘導されて鏡の前に立つ。


「あ、……かわいい、」


麦わらっぽく見えるけど柔らかい生地の帽子に

ミントグリーンのリボンがついてて

とってもかわいい。


健「気にいった?」

「はい、とっても、」

健「じゃあこれで決まりやな」

「え?」


ふわっと頭から帽子が外れる感覚と

聞き捨てならない台詞に振り返った時には、

さっきの帽子と私の頭にあった帽子を合わせて

レジに置いてるところで。


「ちょ、小島先輩、」

健「会計一緒でえぇんで、もうタグ取っちゃってください」

「あの、先輩、」

健「よっしー、お店の外で待っといて」

「う、……分かりました、」


もう色々言いたくてしゃあないのに

冷静にそう言われたら、大人しくお店から出るしかなくて、

ジリジリ聞こえる蝉時雨に気持ちが焦ってく。


どうしよう、

私今日なんもしてへんのに、こんないっぱいしてもろて、

どうやってお礼したらええんやろう……。


さっきの帽子の値段の半分も入ってないお財布を握りしめて

汗が出てくる。



健「よっしー、お待たぁ」

「小島先輩、」

健「ん?どうした?」

「……ごめんなさい!」


思いっきり深く頭をさげて謝る。


健「え、なに。どうしたん急に」

「……私、今日持ち合わせがあまりないんです。

 今度会う時絶対!

 今日の分まで払うし、プレゼントしますから!

 だから、今日は……」


あぁ、情けない。


先輩にこんなかわいがってもらえたのに

私は手土産のひとつも持ってきてなくて、

なんでこう、かわいげないことしかできひんのやろ。


何にもお返しができない自分が悔しくて

つい目頭が熱くなる。



健「よっしー、顔上げ」


小島先輩の声に、しぶしぶ顔をあげる。

そしたら頭の上にふわ、と何かが被せられる感触。


健「おん、やっぱ似合ってるわ」

「小島先輩?」


触ってみたらさっきの帽子で。


健「別に、お返しがほしくてやった訳ちゃうで」


柔らかい声でそう言った小島先輩が微笑んだ。

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作品ジャンル:恋愛
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作者名:マリア | 作成日時:2023年10月3日 0時

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