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「おいくらですか？映画の分も払います」
お店を出てから小島先輩にお願いしたのに、
健「あかん、今日は俺が払うって決めてんねん」
「いやだって、」
健「今日人に奢ると金運あがるって星座占いで言うてたしな」
「……お金減ってるやん確実に」
のらりくらりと交わされて
結局お金は受け取ってもらえないまま、
小島先輩が行きたがってた帽子屋さんについた。
健「よぉーし、買うぞー」
「うわぁ……帽子ばっかり、」
入ったことなさすぎてどこにいたらいいかすら分からへん。
完全にキョドってる私を他所に
楽しそうに帽子を被ってる小島先輩。
あ、そうやん。
ここで買う帽子を私がプレゼントしたらいいのでは？
いいアイディアが浮かんで
試しにその辺りの帽子の値札をひっくり返してみる。
「……19,800円」
そっと値札を返してお別れした。
健「よっしー、こっち来てー」
小島先輩の声がして隣に行ったら
かわいいベレー帽とおしゃれなキャップを見比べてる。
健「これとこれ、どっちがえぇと思う？」
「ベレーとキャップ、悩みますね」
健「そうやねんなぁ、決めきれへんねん」
「ちなみに日常使いですか？それとも特別なシーン用？」
健「うーん、日常使いでもいけるし
ちょっとしたお出かけでも使えたらえぇよな。
デートとか、」
「で、……そうですか、」
あかん、急にやる気なくなってきた。
小島先輩から発された「デート」があまりにナチュラルすぎて
もう手慣れてるようにしか思えへんくて、
そんなんデート相手に選んでもらえばええやん、って思ってしまう。
健「で、どっちがえぇと思う？」
「……似合ってる方でえぇんやないですか、」
健「じゃあ被ってみようかな、」
そう言ってまずベレー帽の方を被って見せる先輩。
あ、かわいい。
けど、日常使いってなるとちょっと服装を選ぶかもしれない。
小島先輩ダルッとした服けっこう着てるし。
健「どう？」
「うーん……かわいいけど、って感じです」
健「なら次こっち」
もう一つのキャップの方を被って振り返る。
「あ、こっちの方が使い勝手よさそう。
何でも合わせられそうやし」
健「ほんま？」
「うん、今の服装にも合ってますよ。
ベレー帽も秋になったらいっぱい使えそうだけど」
健「そうか、じゃあ今日はキャップだけにしとこ」
すっきりしたようにキャップを脱いだら、
健「じゃあ次な、」
って自然に手を引っ張られた。
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作者名：マリア | 作成日時：2023年10月3日 0時
