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手持ち無沙汰になって小島先輩を追いかけたら、
先輩はチケット売り場じゃなくて
チケット確認のゲートに並んで。
「先輩、券は？」
健「あ。俺のズボンのポケットに入ってるから取って」
「え、」
確かに左ポケットからチケットの角が見えてる。
いや、でも男の人のズボンのポケットに手を突っ込むって
そんな、
健「もう次の次やでー」
どきまぎしてる私を見透かしたように
ニヤニヤ顔で煽ってくる小島先輩。
む、むかつく……！
むっとしたその勢いのまんまポケットから
チケットを抜き取ったら、
健「いやぁんえ っちぃ♡」
「小島先輩のそういうとこきらいです」
健「え、ウソやん。よっしー待って」
「待ちません」
小島先輩の声を無視して先にゲートを抜けてやった。
「ちょ、待たんかい！」って
トレー持って追いかけてきた小島先輩に追い越されて、
健「ごめんって、冗談やって」
「……私は、小島先輩みたいに大人じゃないんで、
あぁいうからかい方はやめてください」
健「ふは(笑)顔まっかやで、よっしー」
ニヤッと笑った小島先輩が
顔を覗き込んでくる。
えぇ分かってますよ、だから逃げたのに。
「……子どもなので、」
健「一個しか変わらんて俺ら(笑)」
そう言いながらも
小島先輩はよしよしって子どもにするみたいに頭撫でてきて。
健「でも、そうやな。
よっしーが勝手に大人なったら嫌やな」
ほら。
また、そうやって勘違いするようなこと言う。
この間のオープンキャンパス辺りから
小島先輩はずっと、私をからかって遊んでるんじゃないかって
ことばかりするから、
私はずっと、あわあわしてて、
大学生ってこんな感じなん？
小島先輩も大人になったってことちゃうの？って
ちょっと拗ねた考えしてるのに。
健「ほら、行くで。もう始まるって」
小さい子宥めるみたいにそう言ったら
しれっと手を握って先を歩き出す。
繋いだ手がおっきくて
ドキドキして
自分からは全然、力が入れられなくて。
先に行く小島先輩の顔は見えへんからって
後ろで1人で心臓バクバクさせながら歩く。
スクリーンに入って席に着いた時にようやく手は離れて
ついため息が出た。
あかん、一気に疲れた……。
健「よっしー、右向け―右。1、2、」
「なんで、んん、」
もう言われるがまま横向いたら、唇を割って何かが入ってきて。
健「おいし？ポップコーン」
「……甘いです、」
全部、何もかも。
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作者名：マリア | 作成日時：2023年10月3日 0時
