〇抱えられないくらいの思い出を、2人で。-Purple ページ35
・
午前10時、映画館最寄りの駅ビルの前。
いつもの癖で10分前についたそこには
壁にもたれかかって退屈そうにスマホをいじってる小島先輩がいて
慌てて駆け寄った。
「小島先輩」
健「お、よっしー。はよ」
「おはようございます。
すみません遅くなりました」
健「え、まだ10分前やろ？」
「でも先輩もうついてる、」
健「あぁ、俺のことは気にせんでえぇから」
「でも、」
健「よっしーがいつも10分前にはおるなぁって思って、
その前について待っときたいなって思っただけ。
無問題」
「無問題、ですけど、」
しれっとそう言われても、こっちはそれに戸惑う訳で。
部活の集合にはほぼ100％遅刻してきて
何度「いい加減にせぇよ小島」って怒られてるのを見てたか。
その小島先輩が10分前に、
しかも理由が「待っときたいな」って。
「……ズルないですか」
健「ん、なんか言うた？」
「いえ、何にも」
健「そ、なら行こうや。あと30分で始まんで」
イヤフォンをなおしながら歩き出した小島先輩の後ろを
そそくさと追いかける。
健「夏講習、今日は休みなん？」
「日曜まで学校に行ってたらもう頭沸騰しそうです」
健「そりゃそーやな。今年も暑いし」
「いや、そういうことではなくてですね、」
なんていつも通りの会話をしながら映画館に入ったら、
涼しくてつい息が出た。
健「よっしーくん、
君をポップコーン選び選手権の小島ジャパン代表に選出します、」
「あ、ありがとうございます。初めて聞いた選手権ですけど、」
健「ルールは簡単、
この2000円で好きなポップコーンとドリンクを買ってくるのみ。
はいスタート」
「あ、ちょっと待って！」
健「なんやねん、はよせな負けるやんか」
「誰と戦ってるんです。ってそうやなくてお金！
さすがに私も持ってきてますから、」
健「阿呆、2千円ごときで俺に張り合おうとせんでよろしい。
さぁ大人しく行ってこい！」
「え、そんな申し訳ない、」
健「ごー、よぉーん、さぁーん、」
「もう分かりました！行きますってば！」
カウントダウンするから咄嗟に「行きます」とか言っちゃったけど、
よくよく考えたら、そんな慌てることなかったやんって
ポップコーンの列に並びながらちょっと後悔。
握らされた2千円をしょうがなく使って
キャラメルポップコーンとコーラ、メロンソーダを受け取ったら、
健「時間切れや」
って小島先輩にトレーを奪われた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 166人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：マリア | 作成日時：2023年10月3日 0時
