・ ページ33
・
カランカラン、
淳「いらっしゃーい。あれ、結城ちゃん？」
「淳太さん、お久しぶりです」
淳「ほんまよぉ、最近顔見せてくれへんから心配してたで？
……あれ、後ろの子って」
「あ、前誠也くんと来ました。福本、」
淳「大晴くんやろ？ちゃんと覚えてんで(笑)
そっか、2人とも演劇部やもんな」
「カウンター座って」って促されて
座った席は前の時とおんなじ席やった。
あの時の誠也くんの席に、今日はユキさんが座ってて、
結「来たことあったんだね」
「前、誠也くんに連れてきてもらって。
日替わりのプレートランチ食べました」
結「そっか、誠也くん常連だものね」
淳「そぉそぉ、でもそれで結城ちゃん来れへんって言うんやったら
いつでもすえ追い出すから言ってな」
結「ふふ、ありがとうございます(笑)」
ユキさんはロコモコ丼、
俺は日替わりのランチプレートを頼んだ頃に、
ようやく汗がひいて身体が冷えてきた。
淳太さんが裏に引っ込んで
改めてユキさんの方を向く。
「なんで今日、飯誘ってくれたんすか」
結「……やっぱり、ただご飯行きたいって訳にはいかないよね」
眉をさげるユキさんは苦笑いで
水の入ったグラスに指を滑らす。
結「……この間のこと、謝らないとなって思って」
「この間って、夏旅行のこと？」
結「うん、」
「いや、あんなん俺のただの暴走やし
ユキさんが謝るようなことないし、」
勝手に盛ったんは俺なのに。
それでもユキさんは緩く首を振って、
結「でも、私も思わせぶりなことしたから、」
「あ、……それは、まぁ、」
しょうみ、なぞられた腹筋の感触とか
抱きしめた時の体温とか
忘れらへん思い出いっぱいできてもうてるけど。
―気持ちよさそう、―
―大晴くんに、抱きしめられたら、―
頭に過ったあの時の言葉に
顔の熱がちょっとあがって、
気まずくて目を逸らす。
結「ごめんなさい、やっぱり酔ってたんだと思う」
「……そんなん、大真面目に謝らんといてくださいよ」
真に受けて迫った俺が、惨めや。
結「それでも、大晴くんにだけは
まともな人間だって思われたくてね」
「え、……いや、ユキさんは全然そんな、」
結「だいぶダメ人間だよ。私は。
ふしだらで、怠惰で、臆病で」
自嘲したユキさんの指先が
コップの結露で濡れる。
結「でも、大晴くんと話してる時は楽しいから。
……だから、君の前だけでも
いい人でいたいなぁ、って」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 166人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：マリア | 作成日時：2023年10月3日 0時
