・ ページ29
・
「はぁぁ……、」
『夏バケ』の脚本はもう固まってるし、
直しがあったとしても俺に一任されてるから
ユキさんとそう急いで話すことはないんやけど。
だからこそ、厳しいよな。
タイミング完全に失ってもうてるもん。
江「大晴くん、」
「あ、ん？どしたエリー」
江「いや、大晴くんは、本番もその髪型で行くのかなって」
「あ、あぁ……。ダメそう？」
江「いや！似合ってる！似合ってる、けど、」
誠「エリー、ちょいこっち来て」
江「あ、はい！ただいま！」
あわあわしながら誠也くんのとこに走ってくエリーと
入れ違いにこじけんが隣に寄ってくる。
健「たいせー、まだ話せてないん？ユキさんと」
「まぁ、」
健「チキりよって」
「うっさい、」
健「えぇチャンスやって思えばえぇねんって」
「チャンス？」
健「そ、だって気まずいってことは向こうも意識してるってことやろ？
そんならあとはグイグイ押すだけやんか」
「まぁ、そうやけど、」
健「エリーは頑張ってるのになぁ」
俺らの目線の先にいるエリーは
確かに夏旅行から帰ってきてからちょっと変わった。
前より笑顔が増えた気ぃするし、
俺らとも、先輩らとももっと仲ようなろうって頑張ってる。
一目惚れ同盟結成した時は
俺が相談乗ったる！ぐらいの勢いやったのに、
いつの間にかエリーに励まされてるのは俺の方やし。
「はぁぁ……、」
健「ま、頑張れ。相談はいつでも乗るで。
1回5千円な」
「たかぁ、」
誠「小島ぁ、こっち来てぇ」
健「はぁい♪」
誠「なんやねん、キモいな」
健「俺はそんままでも似合ってるでしょ？」
誠「お前の制服やからな」
健「髪もこの色の方がえぇと思うんですけど」
誠「えぇけど、もっとチャラさほしいな。
“ナオヤ”っていっちゃんリーダーみたいなヤツやんか。
リーダー感がほしいねん」
健「えぇ、じゃあ編み込みとか？」
誠「できんの？」
健「ねぇちゃんに教えてもらいます」
誠也くんとこじけんの話し合う声を聞きながら
もう一度姿見に向き合う。
どうしたらえぇんやろうな、色々。
結「大晴くん、」
え、と思って振り返った。
すぐ後ろに立ってたユキさんは
俺と目が合って、少し気まずそうに目線を外した。
結「誠也くんに
『先に大晴の制服見て』って言われて、」
「あ、……お願いします」
誠也くんの方をチラっと見る。
俺の視線に気づいた誠也くんは
一瞬、ニヤッと笑った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 166人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：マリア | 作成日時：2023年10月3日 0時
