・ ページ27
・
プラネタリウムが終わって、
プロジェクションマッピングとかきわきわ、ふわ！も見て
外に出たら
すっかり外の世界も夜になってた。
「楽しかったな、Aちゃん」
結「うん、来てよかった」
感想をぽつぽつ言い合いながら
自然と駅の方に足が近づく。
もう、そういう時間やって分かってるけど。
「Aちゃん、こっち」
結「え、あ、晶哉」
まだ帰りたくない、帰したくないからって
繋いだ手を引いて
駅とは反対側の人気のない広場に入った。
結「晶哉、もう帰らないとおばさん心配する、」
「分かってる、ちょっとだけ、」
結「晶哉、……どうかしたの」
心配そうな声が背中からして、
合わせへんかった顔を、振り返って見る。
眉をさげて俺を見るAちゃんと目が合ったら、
ふって気持ちが抑えられんようになって、
「Aちゃん、」
名前を呼んで、そのままAちゃんを抱きしめた。
いつもみたいに抱きつくんじゃなくて、
もっと大事に。
宝物を抱きしめるみたいに、
腰に手を回して、肩口に顔を埋める。
「……、やっぱAちゃんえぇ匂いや」
結「まさ、や？」
「なぁ、聞いて」
肩に顔を隠したまんま
Aちゃんの耳元で話す。
「……合格したら、大事な話があります。
その時また、俺とお出かけしてくれますか？」
心配で
ちょっとだけ強めに腰を抱き寄せてしまう。
Aちゃんの髪の毛にほっぺたを寄せる。
ひんやりする体温を
抱きしめたまま、少しだけ時間が経った。
止まってた汗がじんわりTシャツに伝う。
結「……わかった、またお出かけしよう」
そう返事をしてくれたAちゃんに
ほっと一安心して
肩から顔をあげた。
もう汗臭いやろうから、名残惜しいけど身体も離す。
「Aちゃん、待っといてな。絶対合格するから」
結「うん、待ってるね」
「うん、……待ってて」
綺麗になった髪の毛を優しく撫でる。
伏し目がちに微笑んだAちゃんは
やっぱり、世界で一番かわいかった。
・
ホームの別れるところまで俺を送って
手を振るAちゃんが見えなくなった途端、
急に身体から力が抜けたような気がした。
「はぁぁ……、」
言ってもうた。
もう戻れへん。
Aちゃんを迎えに行くためにも、
絶対受からな。
力が抜けた身体をバシバシ叩いて
気合を入れなおす。
汗臭い自分のTシャツからは
少しだけAちゃんの匂いがした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 167人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：マリア | 作成日時：2023年10月3日 0時
