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結局、今日は眼鏡がないと困るってことで
エリーに眼鏡は返して。
そろそろ花火もなくなってきて
みんなバラバラに休憩したりしてる。
江「……結城先輩と、昨日お話した時にね、」
「おん、」
江「去年の新入生公演のこと、聞いたの」
「え、」
それって誠也くんが言ってた
ユキさんが部活辞めかけたって公演じゃ……。
何となく聞いてた意識が急にはっきりする。
江「『ジュエリーゼ』って作品で
その主人公が“エリーちゃん”って女の子なんだって」
「エリーちゃん？え？」
江「そうそう、私も聞いた時ビックリしたんだけど(苦笑)
それで、実は“エリーちゃん”は結城先輩がモデルらしいの」
「へぇ、……初めて聞いた」
ユキさんは去年の新入生公演の話、あんましてくれへんし。
まぁ、したくない理由を知ってる以上
俺もあんま聞かへんようにしてるけど。
江「私の“エリーちゃん”ってあだ名は
正門先輩がつけてくれたんだけど」
「おん、初めて会った時に言うてたもんな」
そう、自分で言って「あれ？」って少し違和感。
同期やし、まっさんももちろん新入生公演には出てる訳で
それってつまり、
江「……たまたま、名前が似てただけ、なのかな」
まっさんは、意図してエリーを“エリーちゃん”って呼んでるってこと？
なんやろ、それって
なんか、
ムズムズするな。
びみょーな顔してた俺の顔を見て、
エリーも眉をさげる。
江「私、エリーちゃんって呼ばれるの嬉しかったの。
恥ずかしかったけど、新しい自分になれた気がしてて。
だけど、
結城先輩からその話聞いて、
正門先輩から呼ばれた“エリーちゃん”が、何か意味があるんじゃないかって」
「意味？」
江「その……、私は、結城先輩と似てるところがある、から」
「まさか、……」
もしそれが事実やとして。
やとしたら、
まっさんとユキさんの関係は
俺らが思ってるよりずっと拗れてることになって。
いや、だって意味分からへんもん。
いや、でもこれは俺らの仮定の話であって。
ほんまのことは、まっさんに聞いてみな
何一つ、確かではなくて。
ただ、
―今の関係はあまりに歪で不毛やから―
誠也くんの言葉がフラッシュバックする。
あかん、俺、ちょっとひよりそうや。
江「……ごめん、こんな話しても
興味ない、よね」
「いや、……そうやないけど」
あの2人、思ってた100倍、ややこいかも知れへん。
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作者名：マリア | 作成日時：2023年10月3日 0時
