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リチャ君が顔洗いに行って
寝る気にもなれへんし、硬い布団に座ったまんま
ぼんやりとざこ寝してるみんなを眺める。
誠也くん、ちっちゃく丸まってんなぁ。
あ、こじけん誠也くん抱きしめて寝てるやんけ。
修学旅行の時は俺が1番抱き心地いいって言うてたくせに。
「……あ、」
思い出した。
俺の隣ですやすや寝てるユキさんの
もうひとつ隣。
ぐっすり眠ってるまっさんが見える。
昨日、初日の夜やのにバカほど飲んで
ベロベロに酔っ払った先輩らを引きずって船室に帰ってきたら、
『……え、寝てる？』
ずっと行方不明やったユキさんとまっさんが
俺とこじけんの荷物があったとこに布団隣に並べて寝てて。
先輩らそこら辺に転がして寝かした後に
どうする？ってなって、
眠そうなこじけんはまっさんのとこ行くわぁって
そんまま寝落ちて。
で、残された俺はしゃーなしで
ユキさんの隣が空いてたから布団引いて
綺麗な黒髪見ながら寝たんやった。
「……そりゃ、襲うって」
悔しかったもん。
全然こっち見てくれへんから。
おらんと思って探してたらやっぱりまっさんとおるし、
向き合って寝てるし。
ほんまに、ただ寝てただけなん？
タオルケットから伸びる柔らかそうな太ももに
少し、ムラッとする俺もいたりして。
触ってみたいな、
撫でるだけでえぇ。
そんな18歳の男子盛りの欲望抱えて寝たら、
そりゃ寝ぼけて抱きつきもするわ。
しゃーないやん。
「はぁぁ……」
風邪引くで？ユキさん。
乱れたタオルケットをかけなおす。
結「んん、ん……」
もぞもぞしたらしくて、眉間に皺が寄る。
結「まさ、かど……？」
掠れた声で呼ばれた名前は、俺の名前じゃなくて。
ほんま、朝から最悪やな。
そう思いながら、ユキさんの髪の毛をそっとのける。
気持ちよかったんか眉間の皺は取れて
俺の手にユキさんのほっぺがすり寄ってきた。
「……もぉ、かわえぇなぁ」
違う男の名前呼ばれて、そんなん思える自分は
多分、だいぶ重症やけど。
まだ誰も目覚めない、この一瞬だけ。
無防備な身体を、背中からこっそり抱きしめた。
「……ふふっ、」
変態やん、こんなん。
自分で恥ずかしくなってすぐ手離してもうたけど、
やっぱ寝込み襲うとか
俺らしくないなって改めて思った。
「……いつか、ちゃんと抱きしめたいなぁ、なんて」
お願いごとを呟いてみる。
いつか叶うんかな？
なぁ、ユキさん。
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作者名：マリア | 作成日時：2023年9月4日 20時
