・ ページ41
・
良「……ゆーき、」
正門の腕を握る手が、少しだけきゅっとした。
そんな私の動揺に気づいてるみたいに
正門はおもむろにお腹に回した腕を抱き寄せて、
さっきよりもっと近く、
吐息が交わる距離で、
良「……結城、」
確かめるように甘く呼ばれる名前。
不用意に返事をしたら
何かが始まってしまいそうな、
そんな緊張。
絆されるような視線から逃げるように目を逸らせば
ぽってりと、いつもより赤い唇が目に入って。
恥ずかしくなって視線をあげたら
また、正門と目が合って。
良「……かわえぇお顔してんで、結城」
「いじわる、しないで、」
良「ふはっ、そんなおぼこい台詞やめてや。
もっと、意地悪したなるから」
頬に手を添えられて
正門の顔が近づく。
もうだめ、と観念して目を閉じたら
一瞬、間が空いて、
ちゅっ。
音を立てて目蓋にキスをされた。
予想外の場所で、肩に力が入る。
次はどこ？
そう身構えてたのに、
良「……ここまで、にしとこ」
そんな、拍子抜けする言葉が聞こえて
つい、右目だけちらっと開けた。
良「ふはっ、何よそのお顔は(笑)
かわえぇなぁ」
そう言ってけらけら笑う正門に
それ以上の色気を誘うのは躊躇われて
むず、とした気持ちを持て余しながら
しょうがなく左目も開ける。
良「なんか眠なるな、船の揺れって」
うぅん……って、呑気に伸びてる正門を
恨みがましく見てたら、
良「あ、結城。お膝かして？」
甘えるような上目遣いで顔を覗き込まれる。
私がその顔が好きなのを知ってて
正門はそういうことをするから、
本当に、ズルい男。
「はいはい、どうぞ」
良「やった」
脚を伸ばして座りなおしたら
嬉しそうに太ももに頭を乗っけて横になる。
すりすりと頬ずりするたびに
マロンブラウンの柔らかい髪の毛がくすぐったくて、
髪の毛に指を通したら正門がこっちを見た。
良「……物足りひんって顔やな」
「……分かってるならなんで、」
良「弁えたんやで？誰か来るかも知らんし」
「誰か、ね」
良「大晴とか」
突然出てきた大晴くんの名前に、なんで？とは思いながら
にんまりしてる正門に聞くのは、どこか癪で。
訳知り顔しながら髪の毛を撫でてたら、
いつの間にか正門は寝息を立てていた。
上下する肩を見ながらさっきの一連を思い出す。
「なんで、」
聞けない質問をまた1つ抱えて、
綺麗な寝顔の、薄く開いた唇をそっとなぞった。
◯眠り姫に願いごと-Orange→←〇何でもお見通しなのはお互い様-Blue.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 142人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：マリア | 作成日時：2023年9月4日 20時
