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船独特の重低音がずっと響いてる船室で
結城先輩とくっついてお話してるなんて、
今までしっかりお話したことなかったから
ちょっとしたことも新鮮で、嬉しい。
結「正門の影響かなって思ってた」
「え？なにが、」
結「結城先輩って言うの」
「あ、いや。それは全然、」
急に出てきた名前に胸がどきん！とする。
結「そう言えば、正門なんでしょう？
『エリーちゃん』の名付け親」
「はい、新歓の時に助けてもらって、その時に」
あの時は、エリーちゃんなんて呼ばれるような人間じゃないって
いや、それは今でも思ってるけど。
「……割と、気に入ってます」
正門先輩から始まったけど
いつの間にか広がってて、
演劇部のみんなから呼ばれる『エリー』は
今までと、違う自分になれたみたいな気がするから。
結「そっか。最初正門がエリーちゃんのこと
そう呼んでるの聞いた時はちょっとビックリしたんだよね」
「ビックリ？」
結「うん、だって
去年の新入生公演のタイトル『ジュエリーゼ』って言うんだけど、
その主人公が2人の“エリーちゃん”だったから」
「え、」
結「エリーゼとエリって2人の対照的な女の子が
メイクしたりおしゃれして少しずつ内面まで変わっていくって話なんだけど、
その2人の女の子を『エリーちゃん』って呼んで
応援する男の子役が、正門」
「応援……」
結「もしかしたら、あの時の“エリーちゃん”たちに感じたものと
近いものをエリーちゃんに感じてるのかなって。
不思議な話だけど、2人に似てる気がするの。エリーちゃんも」
「似てるんですか？」
結「うん、
で、これはあんまり言ったことない裏話なんだけど、
その2人の“エリーちゃん”は
実は、私の内面をキャラクターにした2人でもある。
だから私もなんとなくエリーちゃんに感情移入しちゃうし、
正門にエリーちゃんがかわいがられているを見ると
……そわそわする」
いつの間にか、重低音が消えてた。
これは、またなにかの舞台の伏線なのかな。
正門先輩に呼ばれる『エリーちゃん』の色が
少し、変わったような気がする。
いい意味か、それとも悪い意味なのか。
それはまだ、分からないけど。
膝に顔を乗っけて微笑んだ結城先輩は
本当に綺麗で、私なんかとは比べ物にならない美人だけど
どこか、私と似てるのかもしれない。って。
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作者名：マリア | 作成日時：2023年9月4日 20時
