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「小島先輩、」
息が詰まって、気づいたら涙が零れてて。
健「あかんよな、俺やって分かってたのに。
ほたるがたいせーのこと好きなのも、
たいせーが別の人に本気で恋してるのも
知ってたはずなのに、
俺がよっしーとデートしたすぎて、利用してもうた」
背中に回る先輩の腕に抱き寄せられて
シャツに頬がつく。
零れる涙で、濡らしてしまう。
健「……やから、俺を悪者にしてえぇよ。
よっしーは何も悪くない」
「悪くない」って
どうして、この人は
一番ほしい時に、ほしい言葉をくれて
近くにいてくれんねやろう。
そんなんされてしまったら、
私、自分が悪いことしたのに
甘えたくなってまう。
健「よっしーの友達に、ひどいことしてごめん」
「いえ。……先輩も、悪くないから」
卑怯者の涙を拭いて
顔をあげる。
すぐ真上にあった小島先輩の顔が
心配そうにのぞき込む。
健「ごめん。また泣かしたな」
「……うん、」
健「笑っててほしいって言ったくせにな」
「小島先輩、」
健「ん？」
「……あとで、みんなでペンギン行進見ましょうね」
健「……おん、」
「イルカショーも4人で、見ましょうね」
健「おん、見ような」
小島先輩はきっと、福本先輩の恋が本気だって分かってる。
だけど、私も
ほたるちゃんの恋が本気なのを知ってるから。
やから、
悪いことしてしまった以上は
本人達が行きつくところまで
私には見守る義務がある。と思う。
きっと、小島先輩も
そう思って、2人を誘ったんやろうから。
「……ズルいですよね、」
健「そうやな、俺ら共犯や」
「私、ほたるちゃんの恋バナ、これからどう聞けばいいんでしょうか」
健「まぁ、たいせーの恋も正直かなり難航してるからな。
もしかしたらもしかして、ほたるとうまくいったりして？」
「……それ、あんまり確率高くない感じですよね」
健「ぶっちゃけ」
それじゃ、ダメじゃないですか。
とは言えず、
少し涙でぴりぴりする目元を拭う。
汗だか涙だかわからないものは、少ししょっぱかった。
健「暑いな、中戻ろか」
「はい、」
健「せっかくやからふれあい広場行かへん？
俺、ヒトデ触りたいねんなぁ」
「あれ、意外と硬いですよね」
健「え、そうなん？やわらかくないん？」
「はい、」
何でもないことを言い合いながら中に戻る。
そっと重なった手を
小島先輩が握って、
ちょっと戸惑ってから、握り返した。
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作者名：マリア | 作成日時：2023年9月4日 20時
