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ペットボトルを転がしながら
伝った汗を拭った末澤君の声は
いつもよりずっと優しく聞こえる。
誠「清風ちゃんは、リチャの恋してる顔って分かる？」
「え、どうだろう？」
いつ見てもリチャ君はリチャ君だし、
漫画的なお花やらハートが飛んでるようなリチャ君は
私は見たことがない。
誠「リチャは、分かりやすいで」
「そうなの、」
誠「おん。リチャはなぁ、よぉ笑うようになったから」
リチャ君が笑う？
クララが立った、みたいなことかな。
誠「2年の最初くらいから朗らかになった。
話してる時もクールやんかリチャって。
それ後輩から怖いって言われてたんやで？
やけど、そんぐらいの頃から話してる時もやらかく笑うようになって。
えぇ変化やなって思ってたら
清風ちゃんと付き合ったって知って。
あぁ、やからやなぁって思った。
清風ちゃんに会ってもっと思った」
「私に会って？」
誠「そ、清風ちゃんおもろいやんか」
「え、そうかな？割と普通寄りだと思ってるけど」
誠「いや、それはちゃう(笑)
まぁ、それはそれとして。
清風ちゃんとおるからリチャは丸くなったんやなぁって。
そんな風に分かりやすかったら困らんのにな」
「末澤君の、好きな人が？」
誠「うん。……あ、」
自分で口にしてから、ハッとしたように
バツが悪そうに私を見る末澤君。
誠「まだ、好きって自信ないねん」
「好きって自信制だっけ？」
誠「……ずっと、守ってやらなって思ってたから
家族みたいな気もするし。
妹みたいなもんやって、」
「自分に言い聞かせてた、とか」
誠「……そうかも知れへん」
くしゃりと表情を崩した末澤君が
髪の毛を触る。
綺麗な金髪の髪が夕陽に当たってキラキラしてる。
誠「言い聞かせてただけ、か。
……なんか、ちょっと見えた気ぃする」
「ありがとう、清風ちゃん」って
立ち上がった末澤君が髪の毛を整える。
「すっきりした？」
誠「おん。ごめんな、しょぉもない話に付き合わせて」
「ううん。恋バナ好きだよ？聞くのはね」
誠「えぇって、リチャのそういうのはちょっと恥ずいわ(笑)」
「そっか」
男の子同士って案外そういうものらしい。
部活棟の下まで他愛のない話をして末澤君は「じゃあ、またな」って
爽やかに手を挙げて帰っていった。
夏の夕陽を浴びてキラキラしてる後ろ姿を見て、
もしかしてあれが、
恋をしてる姿なのかな？
って何となく思った。
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作者名：マリア | 作成日時：2023年9月4日 20時
