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「ううん、お友達からプレゼントでもらって、」
誠「でもこれって「恋するハーバリウム」って人気のやつやん。
なに、願かけ？」
「え、う、……」
確かに、お友達からもらった時に
すぐ誠也くんの顔が浮かんだけど。
誠也くん、詳しいね。
流行とか分からん、っていっつも言ってるのに。
そんなん、女の子が詳しそうなこと
誠也くんが知ってると、ちょっと、ムズムズする。
誠「なぁ、A。答えてや」
「……誠也くんには、ないしょ」
私の視線に合わせて覗いてくる誠也くんから顔をそらす。
いややな、今、きっとかわいない顔してる。
誠「……なんやねん、好きな人おるんやん」
「え、」
誠「そんなら、守らんでもえぇやんな」
「誠也く、きゃ！」
肩を押されてベッドに倒れこんだ私の上に
誠也くんが乗りかかる。
照明が逆光になって、
私を見下ろす誠也くんが、ちょっと怖い。
「誠也、くん、」
誠「俺に守ってほしいんやなかったん」
「え、」
誠「他の男でもよかったん」
「どういう、」
誠「……、阿呆みたいやんか」
「、！？」
ぎゅーって、
背中に回った腕の力が痛いくらい
抱きしめられて。
動けない。
行き場のない指先が丸まる。
誠「ずっと、……、のに……」
耳元のくぐもった声はところどころ聞こえなくて。
その後はもう、何にも聞こえなくなって。
しばらくして、
誠「すぅ……、……」
「誠也くん？」
ゆっくり力が抜けて
身体の上にずっしり乗っかった誠也くんの体重が
熱い。
寝ちゃった……。
さっき、見下ろされた誠也くんの眼差しと
冷たくて、どこか怒ってる言葉たち。
誠也くん、何で怒ったん？
残り香みたいなもやもやする気持ちを持て余したまま、
ほっとした拍子に流れた涙をそのままにしてたら
私もいつの間にか眠ってた。
・
次の日、目が覚めた誠也くんは
誠「うわぁ！なんでAおんねん！」
ってビックリしてて、
つまり昨日のことはさっぱり憶えてなくて
誠「ごめん、ほんまにごめん！」
って床に頭がつく勢いで謝ってた。
そんな誠也くんに昨日の夜のことなんて聞ける訳もなくて。
「うん、……いいよ」
曖昧な気持ちのままそう言ったら、
誠「A、ちゃんとお詫びしたい。
何でも言うて。してほしいことも、買ってほしいもんも何でも」
「何にもないよ」
だって、ほしい質問の答えを
誠也くんは忘れてるやろうから。
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作者名：マリア | 作成日時：2023年9月4日 20時
