・ ページ20
・
誠「〜♪」
ご機嫌な誠也くんは
繋いだ手をるんるん振りながら鼻歌まで歌って
だけど不思議なくらいしっかりした足取りで
まっすぐ私の家の道を歩いてく。
誠也くん、すごい。
こんな酔っぱらっててもちゃんと歩けるんや……。
誠「ついてきてるぅ、A？」
「え、うん。ついて来てるよ」
誠「手ぇ、はなしたらあかんで？」
「うん、」
誠「まいごになったらあかんからなぁ」
「うん、」
あ、そうだ。
小さい頃からずっと
誠也くんのお家に行く時も、初めてのところに行く時も
誠也くんが手を引いて歩いてくれた。
「迷子になったらあかんで？」って言いながら。
今も、きっとその感覚なんだ。
かわいい、妹のまんま。
そう思った瞬間、繋いでる手がちょっぴり苦しくなった。
誠也くんの鼻歌を聞きながら
迷わずアパートの前まで帰ってきて
エレベーターに乗り込む。
手は繋いだまま、隣に並んでる誠也くんを見る。
ほっぺたと目の端が少し赤くなった誠也くん。
3歳も歳の差があったら
いつでも誠也くんはお兄ちゃんで
だから、こんな甘えた誠也くん見れて
私は、けっこう嬉しいのに。
やっぱり。
「え、あ、ちょっと、」
肩の重みに、バランスを崩しかける。
ゆっくり倒れてきた誠也くんのほとんど金色の髪の毛が
左肩に乗ってて。
誠「A、」
「な、に」
エレベーターのぽぉん、って間延びした音がして
扉が開く。
誠「あ、ついてもうた」
「れっつごー」って気の抜けた声と一緒に
手を引かれて廊下に出る。
私はというと、
自分の身体にほんのりついた誠也くんの香水の匂いに
ドキドキしてて。
誠「ただいまぁ！」
「おかえりぃ……」
自分の家くらい当たり前にそう言って、
だけどちゃんと靴は並べて
誠也くんがあがっていく。
大丈夫かな？
誠「おぉ、ここがAのおへやなんやな」
珍しそうにきょろきょろお部屋を見るから
掃除しといてよかったって、ほっとする。
「誠也くん、お水飲む？」
誠「ん。ちょーだい」
冷蔵庫からペットボトルを出してついでたら
誠「あ、これ知ってるわぁ。人気やんなぁ」
「ん、どれ？」
お水を持って行きながら覗いたら
テーブルに並べてたハーバリウムを
誠也くんは子どもみたいに覗き込んでた。
「それ、お友達からもらったの」
誠「ふぅーん、男？」
「え、」
振り返った誠也くんの顔は
ちょっとだけつまらなさそうな表情。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 142人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：マリア | 作成日時：2023年9月4日 20時
