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そんな目で見つめられたら、

返す言葉もなくて。


ただ、まっさんがうらやましくて。

ユキさんに、『大事な人』って言ってもらえるのが。



「じゃあ、……俺は?」

結「え、」

「俺は、大事な人ですか?」


気付いてくれへんかな。

繋いだ手と、

こんな分かりやすい言葉で

俺の気持ち、気づいてくへんかな。



結「大晴くんは……、大事な後輩」



繋いだ指先がそわそわと動く。

だめ、離してあげへん。


「ユキさん、」

結「私、あんまり積極的に話すタイプじゃないけど

 大晴くんはいっぱい話しかけてくれるし

 脚本のことも一生懸命取り組んでくれるから。

 初めて、ちゃんと教えられてる気がするの。

 演劇のこと、引かないで、茶化さないでいてくれるの

 滅多にいないから……だから、」


俺の目を見上げたユキさんの瞳に

少しだけうるっと張る、水の膜。


結「……こんな私を、頼ってくれてありがとう」



あぁ、もう

あかん。


そんな泣きそうな顔して

嬉しそうな顔されたら。



―『女が脚本なんて』みたいな。―



その「ありがとう」の中に、

どんだけ悲しい思い出があるか、

知ってるから。


強引に、気持ちを押し付けることは

もうできひん。


ただ、


「……俺も、ユキさんの後輩でよかったです。

 脚本書いてみたら楽しいし、ユキさん優しいし。

 最高っすよ。ユキさん」

結「そんな、私なんて、全然、」

「私なんてちゃう。

 ユキさんと一緒やから、俺は楽しいんやで?」



ただ、近くにいさせてほしい。


嬉しい時も、落ちちゃう時も

俺がいるから。


きっと、笑顔にしてみせるから。



「ユキさん、俺、」

ひゅぅぅぅ……、



ドドーンッ!!!


―おぉぉぉ!!―

―始まったぁ!!―


ユキさんの頬に、不規則な影が映る。


その影を拭うようにそっと手を置いたら、



結「大晴くん?」

「……やで」

結「え、」


まだ、言わへんから。


ちゃんと、俺のこと見てくれるまで。

俺、頑張るから。


初めて触ったユキさんの頬から

名残惜しいけど手を離す。


「帰りましょ?ユキさん」

結「……うん、」


手を引いて歩く半歩後ろにユキさんがついてくる。

少しだけ、

ちょっとだけ、照れたりしてくれてたら嬉しいねんけどな。


そんなん思う俺も恥ずかしくて

顔なんて見られへんのやけど。


遠くに演劇部のブルーシートが見えてくる。


今日は、ここまで。

隠すようにこっそり手を離した。

〇サプライズ?orハプニング?(後編)-Red→←・



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作者名:マリア | 作成日時:2023年9月4日 20時

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