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「フルーツ飴ってもっと甘いって思ってたけど
案外食べやすいんやな」
結「そうそう、お店によっては飴いっぱいついてるところもあるけど
私も薄付きの方が好きかな」
「はい、マスカット」
結「あ、ありがとう」
俺の串を取って一粒食べたら
ユキさんのほっぺたがぷくって膨れる。
「はは、ユキさんリスみたいやん(笑)」
結「ん、でもおいひぃ」
「ふふ、かわえぇ(笑)」
結「はい、」
「んえぇ？」
結「りんごもあげる」
ユキさんがかじった跡のあるりんご飴の反対側を
俺の口元に差し出して不敵に笑うユキさんは意地悪や。
「い、いただきまーす」
めっちゃドキドキしながら反対側をかじったら
マスカットより甘酸っぱい味がして。
結「おいしい？」
「うん、おいひぃ」
結「ふふ、それならよかった」
なんの戸惑いもなく俺がかじったところの近くを食べながら
下駄をからころ鳴らして歩くユキさん。
さっきより人混みは少し減った、けど
気ぃ抜いたらすぐ、ユキさんはどっか行ってしまいそうやから。
「ユキさん、手」
結「ん？」
「……繋ぎましょ」
人混みの中で差し出した俺の手を
ユキさんが見る。
結「……、」
「迷子にならへんように。
俺がちゃんと引っ張るから」
結「……うん、」
白くて柔らかい手の平が、手と重なって。
もう一度繋ぎ直した手は、もう離したないくらい
大事に握って。
「下駄、痛くないですか？」
結「うん、これは普段から履いてるものだからね」
「え、下駄普段履き？」
結「ゴミとか捨てる時にちょっとつっかけると楽なんだよ？」
「うわぁ、お洒落やなぁ」
結「正門がくれたの。『俺とお揃いにしよ』って。
だから鼻緒の色が私が薄紫で、正門が藍色」
「え、そう、なんすね……」
もう、ズルいって。
つま先見ながら鳴らす下駄の音に嬉しそうなユキさんも
やっぱり見たことない顔やから。
もう、どうしたらええねん。
やっぱり、オブラートなんて意味ないんやなって。
こうなったら覚悟、決めるしかないんやな。
「まっさんと、ユキさんって付き合ってるんですか？」
勇気を出して聞いた言葉は、
自分でもなっさけないくらいちっさくて
それでも、
ちゃんと聞こえてたらしいユキさんは
ちょっとだけ眉をさげて屋台に目を逸らした。
結「付き合ってはないよ」
「……、」
結「でも、正門は大事な人」
逸らしてた目が合う。
まっすぐ、でも少しだけ揺れてる目と。
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作者名：マリア | 作成日時：2023年9月4日 20時
