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良「『怖いんですね』って言おうとしたやろ今(笑)」
「ま、まだ言ってません」
良「はは(笑)それもう言うてもうてるのと一緒やで？」
「あかん子やなぁ、」って
すごく自然に頭を撫でられて
さっきの甘い香りが、もっと近づく。
恥ずかしい、けど
正門先輩の顔、見たいな。
ブルーシートに向けてた視線を、
思いきって少しあげてみる。
良「やぁっと目ぇあった」
「ん、」
思ったよりずっと近くにいた正門先輩に
息が、止まる。
整った顔が目の前でふにゃ、と微笑んで
「ほんまにエリーちゃんはかわえぇな」って
目を合わせながらゆっくり頭を撫でる。
苦しい。
この距離
この体温
この甘さ
さっき、結城先輩とのやり取りを見てた時とは違う。
とろけるように、胸が苦しい。
良「エリーちゃん、まだ慣れへんの？
俺に甘やかされんの」
「な、慣れてたら……こんな、」
良「こんな？」
それは、意地悪です。先輩。
そんな、溶けちゃうような目でこっちを見ないで。
また、私、流されちゃう。
「……ドキドキ、しません、」
良「ふふ、ドキドキしてんねや」
唇に魔法をかけられたみたいに
本当のことしか口にできない。
きっと、ほっぺたは真っ赤に熟れて
恥ずかしい顔してるんだろうな。
それが分かるくらい、正門先輩は甘い甘い表情をしてて。
良「たこやきお膝から落っこちそうやで？」
「え、あ、」
すっかり力が抜けてた膝の上から
たこ焼きの舟が今にも滑り落ちそうで慌てて持ちなおす。
「ちょっと冷めちゃった、」
良「じゃあ、俺にちょーだい？」
首を傾げて甘えた目で見てくる正門先輩には
やっぱり魔法がかかってるみたい。
普通なら絶対できないのに、
自然とたこ焼きに串を刺して
「はい、……どうぞ」
良「えぇ、「あーん」って言うてよぉ」
「あ、あーん？」
良「はは(笑)……ほんまかわえぇわ」
重力でおっこちそうになったたこ焼きを
掬いあげるように食べて、
正門先輩の目は私を見つめたまま。
「先輩……、酔ってますか？」
そうであってほしい、
そうじゃなきゃこんなの素面の私が不利すぎて。
もう、ちょっとでもこっちを見たら
私、自分じゃないことしちゃいそう。
良「酔ってんねやろうなぁ。だいぶ(笑)」
間延びした声でそう言う正門先輩からようやく目を逸らす。
「そうです、か」
自分で聞いたくせに、ちょっとだけ
素面だったらな、なんて
矛盾してるね。
〇ただ、どうしようもなく好きだから。-Orange→←〇気まぐれに微笑んだりして-Blue
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作者名：マリア | 作成日時：2023年9月4日 20時
