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こんなとこにおるん絶対演劇部しかおらんやんって
何の気なく搬入口の曲がり角を覗いたら、
「えっ……」
電気もついてない暗がりで
役衣装のままのまっさんの胸に抱かれる後ろ姿は、
間違いなく、俺の好きな人のシルエットで。
結「……グスッ、うぅっ」
え、ユキさん泣いてるん……？
思わず声をかけようとした瞬間、
まっさんの顔がふっとこっちを見た。
「しーっ……」と声に出さず、
人差し指を唇に当てたまっさんは
いつものぽやぽやしたまっさんとはまるで別人で。
まるで『欲動』の続きを観てるような気ぃして
足が動かんくなった。
良「……結城、」
ユキさんの名前を呼ぶ甘い声。
それにつられるように顔を上げたユキさんの頬を
まっさんが両手で包み込んで
そのまま、
良「ん……」
まっさんはユキさんにキスした。
「あ、」
弾かれたように足が動いて、
気づいたら回れ右してそこから逃げ出しとった。
頭が茹で上がるくらい熱いのに、
頭の中は真っ白で。
真っ白のクセにこんがらがってて。
ユキさんとまっさんってやっぱりそうなん？
でも、なんで？
なんで、あんなん、
さっきのキスシーンが何度もフラッシュバックしては
胸がぎゅうぎゅう音を立てて苦しい。
健「え、めっちゃ息切れてるやん。どした？」
誠「あ、大晴。正門は？」
ロビーまで無我夢中で戻ってきたら
こじけんと誠也くんから声かけられて、
「いや、知らん……っ」
『キスしとったで』なんてバカ正直に言えるはずもなくて。
走ったせいで息もゼェゼェするし、
めっちゃ心臓痛いし、
健「大晴、大丈夫か？涙目やで」
「泣いてへん！」
健「え、いや俺はただ涙目って、」
「泣いてへん！！」
健「え、うん」
「泣いてへん、から……っ」
ただの酸欠や、だから目がピリピリするんや。
だから泣きたなるだけで。
だから、
だから、
あの2人のキス見て、泣きたい訳やなく、て、
健「……誠也くーん、」
誠「どないした？小島」
健「ちょっと連れション行ってきますわ」
誠「はぁ！？お前今からミーティングや言うてるやん」
健「けどまっさんもユキさんもおらんなら始められないっしょ？
2人帰ってきたら先やっとってください。
たいせーがもう我慢できひん言うてるんで(笑)」
誠「はぁ？……はぁ、はよ戻ってこいよ」
健「ういっす。ほら行くで」
「こじけん、」
健「アホ、まだ泣くな」
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作者名：マリア | 作成日時：2023年8月18日 15時
