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★〇◆たかが恋、それが恋。-Orange ページ7





誠「全員集合!」



誠也くんの号令で全員が輪になる。


これが『欲動』公演最後の円陣。


まだ俺らしかおらん会場に

緊張感がぴんと張り詰めるこの瞬間が

やっぱ一番ゾクゾクして、


誠「いよいよ千秋楽です。お前ら準備できてんのか?」

―おおぉい!!―


お揃いの演劇部Tシャツでがっつり肩組んだ全員が

ギラギラした顔で見つめあって、

その熱量に俺もテンションのギアが一気にあがってく。


誠「上等。その勢いのまま最後まで駆け抜けましょう!

 ほんなら座長、掛け声言ったれ!」

良「っしゃあ盛り上がってるかい、演劇部!」

―おぉぉい!―

良「一昨日昨日ってやってきて

 今までで一番の、最高の芝居になる予感がしてます。

 みんなはどうだい?」

―おぉぉぉい!―

良「今日ラストです、千秋楽です。

 俺らの出せる最高の芝居やって伝説に残る公演にしましょう!

 行くぞーっ!!」

―おおぉぉぉっ!!!―


ばっちし気合い入れたとこで開場時間になって

お客さんがぞろぞろ入ってくる。


―前のブロック全部埋まった!―

―パンフレットまだある!?―

「はい、すぐ出せます!」

健「たいせー案内頼むわ!」

「分かった!」


千秋楽やし評判もかなりえぇらしく

間違いなく今日が1番お客さん多くて、

次から次に走り回って

なんとか全員を会場に入れきった時にはもう開演5分前。


誠「やば、もう時間やん!あと頼んだで2人!」

「はい!」


ぎりぎりまで挨拶回りしとった誠也くんも

照明の手伝いしにバタバタ会場に入ってって

俺とこじけんの2人だけが受付に残った。


健「なぁ、たいせー」

「なに?」

健「俺らも入ろうや」

「えぇの?受付おらんくて」

健「アホ、そんな真面目でどうする。

 それより千秋楽の客ぎゅうぎゅうに詰まった舞台で

 芝居やる先輩ら見たいやろ?」

「……それは、見たい」


あの熱気の中で芝居する先輩達の姿、やっぱ見てみたい。


健「なら決まりやな。何かあったらあとで2人で謝ろ。行くで」

「おん、」


アナウンスが終わった会場に滑り込んで

一番後ろの席の後ろで立ち見する。



ブーッ……


独特の重低音がして、会場が一気に息を潜めた。






“どうしたんお嬢さん。ずぶ濡れやで”



恋人に捨てられた露子が雨の中で章次郎と出会う冒頭の場面。


見つめ合う2人の息遣いが生々しく聞こえてくる。



“もう、すべて忘れてしまいたいの”

“ほうか……、ならついておいで”

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作者名:マリア | 作成日時:2023年8月18日 15時

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