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―そう言えば、正門先輩と結城先輩って仲いいよね―
「え、」
いきなり出てきた正門先輩の名前に
ビクッて反応しちゃう身体。
勘ぐられちゃった？って心配したけど
その子は話に夢中で私のことなんて見てなかったから
そっと一安心する。
―結城先輩の「正門先輩と仲いい」アピール正直ムカつかない？
正門先輩誰にでも優しいのにさ、
『私は特別』みたいな顔しててちょっとウザいよね―
あぁ、イヤだな。
お世話になってる先輩のこと、そんな風に言いたくないのに。
―男ウケする顔と身体してるだけなのにね―
イヤだな、
―勘違いして可哀想ってゆーか―
もう聞きたくないな、
帰りたいな、
―ほんと、結城先輩って―
良「結城がどうかしたん？」
特徴的な甘くて少し低い声が
ふいに悪口の続きを遮ったから、
心臓がドキッ、と音を立てて。
慌てて振り返ったら、
「……正門先輩」
良「あらら、エリーちゃんもおったんや」
「ご無沙汰やなぁ」って
いつもみたいに優しく微笑んだ正門先輩が
扉を開けたまま部室に入ってくる。
良「なに？結城に意地悪でもされたん？」
―えっ、いや、そういう訳じゃなくて―
良「そしたらなんで結城の悪口言うてたん？」
あれ？
扉は閉めてたはずなのに、
どうして悪口言ってるってすぐ分かったんだろ……？
ふっと浮かんだ「？」は
目の前の光景にすぐどっかへ吹き飛んじゃった。
―ま、正門先輩……っ―
良「ん？どうしたん？俺には言えへんの？」
椅子に座ってるその子の肩にさりげなく腕を回して
上から覗き込んだ正門先輩が
甘く微笑んで瞳を細める。
ち、近い……！
チクッ、とまち針が指先に刺さった時みたいな刺激で
身体中がビリビリして、
良「あかんよ？
汚い言葉言うたらせっかくのかわえぇ唇が汚れてまうから」
ぷっくり色づいた唇を骨張った親指がじれったくなぞる。
どうしよう。
こんなの見てもいいのかな、私。
良「結城は俺の大事な同期やから、仲よぅしたってな？」
―わ、わかりました―
良「約束できる？」
―はいっ♡♡―
……分かってる。
あんな至近距離で
にこってとろけちゃうような笑顔で微笑まれたら
めろめろになるのは当たり前だもん。
分かってるけど、
でも今の部室の空気はさっきとおんなじくらい、
いや、その時よりなんだかずっとイヤで。
やっぱり、かわいい子には正門先輩も騙されちゃうのかな……。
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作者名：マリア | 作成日時：2023年8月18日 15時
