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〇初恋わずらい-Blue ページ35





大学生にとって一大事な前期考査が始まって、

せっかく先輩たちのお名前も分かるようになってきたのに

部活はお休み期間中。



誠『会議中のプレートがかかってへんかったら

 いつでも部室に入ってえぇからな』


って末澤部長が言ってたから、

勇気を出して部室に行ってみたら誰もいなくて。


ほっとしながら1人で勉強してたら、



ガチャ、


―失礼しまぁ、って江里口ちゃんしかいないの?

 せっかく正門先輩いるかもって思って来たのに―



「がっかりー」っておっきい溜息をつきながら隣に座った

同期で唯一の女の子とは、

まだまだ仲良しになれてないまま。


―ここあっつ!なんでエアコン入れないの?―

「あっ、」



人が少ない時はつけないようにって末澤部長言ってたのに……。


なんて、当然言える訳もなくて。



―大学のテストがこんなに多いとか聞いてないんだけど。

 大学とか遊びで来てるのにさぁ―

「あ、はは……」

―江里口ちゃん確か心理学科だっけ?

 いーよね、絶対うちの学科よりテスト楽そう(笑)―

「は、はは、」


楽かどうかなんて自分では分からないから

取りあえず笑ってみる。


本当は明日のテストの勉強したいけど

勉強しながら聞いたら

きっとイヤな顔されちゃうよね……?



―ってか新入生公演ヤバくない?

 青春ものとかウケるんだけど(笑)

 結城先輩って意外とあぁいうベタな話好きなんだね―

「え、えっと……」



ベタ……なのかな?


打ち合わせの時に結城先輩から、

『これね、前にうちのOBが公演で使った脚本なんだけど。

 今年の顔ぶれ見てたらピッタリだなと思って』

そう言って見せてもらった5年くらい前のものらしい脚本は、

確かに青春ものではあったけど

幽霊の女の子が出てきたり、

コミカルな会話劇なのに内容が死生観についてだったりって

読みこめば読みこむだけ解釈が広がるお話で。


すごく面白そうって私は思ったし、

他のみんなも「これえぇっすね!」って言ってたけどな……。


ううん、そうやって決めつけちゃだめだめ。


人の価値観はそれぞれだし、

うまく話を合わせないと。

2人きりの女の子同士なんだから。



―結城先輩って案外高校時代とか荒れてたりして(笑)

 なんか男関係だらしなさそうだよね―

「そ、そうかな……?」


なんて返したらいいか分からなくてぎゅっと手を握りしめる。



……でも、イヤだな。


今の空気も、今の自分も、今なんだかすごくイヤだ。

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作者名:マリア | 作成日時:2023年8月18日 15時

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