◆明け方のボーイズトーク ページ30
・side.Taisei
健「たいせー、遅いでー。はよせな遅刻してまうやん」
「はぁ！？やったら自転車降りろって！」
健「そらぁ出来ひん相談やなぁ」
土曜の朝8時の誰もおらへん坂道に響く俺らの声と、
自転車が軋む音。
健「何かエモいな、たいせーとチャリ2ケツとかいつぶり？」
「いや、エモいとか、言うてる場合ちゃう……！」
健ちゃんしっかり重いねんて！
ゼェゼェ言いながら必死に坂道漕いで登ったら、
よーやく平らな道に出たけどもう体力が限界で。
健「お疲れさん」
「肩ぽんぽん叩くん止めて、ちょっとキライになりそう(笑)」
健「えぇ？やったら……きゃあ♡たいせーせんぱぁいかっこいい♡」
「あかん、それはもっとイヤや(笑)」
昨日の打上げで“色んな意味で”目立っとった子のマネが
ぜつみょーにうますぎて、
吹きだしてもうたら自転車が一瞬ふらっとした。
あぶな、転ぶかと思った。
健「けっこう似てたやろ？」
「似てんで(笑)まっさんの困り顔めっちゃ思い出すもん」
健「にしても可哀想やったなぁ、まっさん。
自分らの打ち上げやのにずっと付き纏われとって」
「まぁ、あん後2年だけで3軒目行ったらしいから
そこでしっかり飲んでんちゃう？」
2次会終わって解散するって話してる端っこで
ユキさんに「お疲れ様」って頭撫でられとったまっさんは
へにょんってあざとい顔して甘えとって。
それ見て、内心めちゃめちゃ嫉妬しとって。
「……やっぱ、まっさんやないとあかんのかな」
健「え、なに？急に」
「いや、なんか認めんのは悔しいけどさぁ、
ユキさんとまっさんってやっぱお似合いやなぁって」
まぁ見ての通り美男美女やし。
リチャ君も言うてたけどただの同期にしては
距離近すぎるってか、ちゅーもしちゃってる訳やし。
まっさんにちゅーのこと聞いた時に、
「実は俺ら付き合ってんねん」って言われたら
多分、納得しとったと思うもん。
さっきよか漕ぎやすくなったペダルを力いっぱい踏みながら
じりじり暑なってきた住宅街を駆け抜ける。
健「まぁ、その気持ちは分からんでもないけどなぁ。
けど俺はお似合いやと思うで？たいせーとユキさん」
「えー、ウソやぁ(笑)
喋ってる時の雰囲気とか、俺とまっさんじゃ全然ちゃうし。
“かわえぇ後輩”としか見られてへんことくらい
自分でも理解ってんで？」
健「いや、これはけっこうガチで」
そう言ったこじけんは珍しく真剣そうな声やった。
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作者名：マリア | 作成日時：2023年8月18日 15時
