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だる絡みから必死に逃げ回っとったら
「あ、そぉ言えば」ってキク子さんが急ににんまりして、
菊「大晴さぁ、『欲動』の主人公どうやった？」
「どう、って何が？」
菊「まっさんに似てるって思わんかった？」
「えぇ？……まぁ、確かにまっさんも優しいし、
女の子にもあんなんなんやろうなぁって
けっこう章次郎と重なるとこあったけど」
菊「ふふっ、そうやろ？
初めて脚本読んだ時ちょっと笑ってもうたもん。
『まんま正門良規やん』って(笑)」
唐突にそんな話しだした意味が分からんくて
つい眉寄せて先輩を見てまう。
菊「だらしなく女と付き合っては別れて、
そんな男が運命の女と出会って堕ちていく。
それが『欲動』って話やったんやで？」
「……何が言いたいんすか、」
菊「そんな
……何も意味ないとか思ってるん？」
急に出てきた好きな人の名前に
どう反応すべきか分からんまま、
菊「……ほんまにまっさんとキスしたかったんは
ユキやったんかもなぁ」
なんてリアクションに困る台詞残して、
「まっ、大晴も頑張りや」って呑気に
こじけんとあっち向いてホイやり始めるキク子さん。
「はぁ……」
そんなん俺も考えとったって。
ってか「キスしたかった」どころかキスしちゃってるし。
どうしてくれるん？
せっかく楽しかったのに
色々思い出したせいで萎えてもうたやん。
ぐちゃぐちゃした気持ちで座敷を見回してみる。
―正門せんぱぁい♡―
良「もぉ、いい加減にしぃや？」
色んな声が飛び交う賑やかな座敷の中に
ユキさんの姿はなくて。
あ、もしかしたら、
こっそりと座敷を抜け出して店の外に出たら、
「……やっぱおった」
結「あれ、大晴くん？」
店ん横のベンチに座っとったユキさんが
俺を見て首を傾げた。
結「探してた？」
「いや、俺が勝手におらへんなぁって思ってただけで、
その……ユキさんとお喋りしたかったから」
結「ふふっ、そっか。じゃあお喋りする？」
ぽんぽんって隣に誘われてドキドキしながら座る。
座敷の密度の濃い熱気とはちゃう、
雨雲のじっとりした湿気ですぐ身体が汗ばんでく。
結「さてさて、何を喋ろっか？」
「あっ、……何も考えてなかったです」
結「あらら(笑)」
くすくす笑ったユキさんが「じゃあ、」って言って
上目遣いに俺を見つめてきて、
結「大晴くん、……好きな人いる？」
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作者名：マリア | 作成日時：2023年8月18日 15時
