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「うわぁ、あかん。雨降ってるやん」
結「あらら……」
長居してもうたお好み焼き屋を出たら
すっかり暗なった外はぱらぱらと温い雨が降ってた。
「結城傘ある？」
結「うん、もってる」
「ほんなら入れてくれへん？俺の傘部室に忘れてきてん」
「いいよぉ」って間延びした声で傘を開く結城に甘えて
相合傘しながら駅までゆっくり歩く。
結「〜♪」
あらら、珍しい。
結局あの後もう1杯お代わりしてもうたもんな。
足取りこそしっかりしとるけど
結城はいつもよりぽやぽやしとって、
「お嬢さん、酔っぱらってるん？」
結「うぅーん……気分はけっこういい、かな？」
「そっか、それやったら何より」
来た時より顔色もえぇし、
やったら飲ませた甲斐もあったってことで。
横目に盗み見た初めての酔い姿は
元から綺麗やった結城を更に艶めかしく映す。
ほんのり紅く染まった頬に
薄く開いた唇。
少しとろんとした瞳。
……他のやつらに取られへんくてよかった。
なんて、らしくもないこと思いながら、
「雨濡れんで？」
それとなく華奢な肩をそっと抱き寄せた。
結「正門？」
肩にかかった俺の指をきゅ、と掴んで上気した顔が上向く。
「ん？どうしたん？」
結「雨、もう止んでるよ？」
「え？……あ、ほんまやなぁ」
もうちょっとだけ、気づいてないフリするつもりやったのに。
まぁ、しゃあないかって傘を閉じようとした手を
結城の指先がぎゅう、と握りしめる。
「なにぃ？傘閉じたいねんけどお嬢さん」
結「……だめ、」
「なぁんでよ(笑)ちょっとだけやから。な？」
結「でもだめ、」
「えぇ？」
結「……正門、離れちゃだめ、」
アルコールで潤んだ瞳が上目遣いに揺らめく。
……ほんま、ズルいよな。
「なに？甘えたいん？」
握られてない方の手で傘を閉じながら
目を離さないままそう尋ねたら、
「うん」って子どもみたいにこくりと頷く結城。
「じゃあ、どうしてほしいん？」
結「……手、繋いで」
「そんだけ？」
まぁ、分かってるクセにそう聞く俺も大概やろうけど。
結「……ぎゅって、して」
他の誰にも見せへん“こういう表情”を
俺にだけ向けてくれる結城が可愛くて。
この場で抱きしめてまいたい衝動を堪えて、
指先をいじらしく絡めとっていく。
「……ほんなら、おいで」
伏し目がちに頷いた結城の手を引いたら
お互いの体温が溶けあうくらい火照ってた。
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作者名：マリア | 作成日時：2023年8月18日 15時
