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「ほんなら、初めてのお酒に乾杯」
結「乾杯」
恐る恐るグラスに口づけた後、
結城は小難しい顔しながら2つ瞬きして、
結「……いけそう」
「はは、ほんならよかった(笑)」
かわえぇな、おぼこい反応しちゃって。
初な結城の仕草を眺めながらお酒を嗜んどったら、
いつの間にか結城のグラスは空になってた。
「美味しかった？」
結「うん、まだ平気そう」
「そっか。ならカシスも飲んでみる？」
結「うん」
けろっとした顔で頷くから
そんなら、って俺もグラスの残りを一気に煽って
お代わりを頼んだら、
はぁ、って堰を切ったような溜息が聞こえてきた。
結「……二十歳ノイローゼ、とでも言うのかな」
「ん？」
顔をあげたら結城はぽつ、ぽつと言葉を零す。
結「なんだろうね……。
二十歳になった瞬間、
あ、もう大人なんだって急に気持ちが焦っちゃったの。
でも自分はまだ学生で、正直実感もなくて」
そう言いつつ、ゆっくりグラスをなぞる細い指先は悩ましげで。
結「正門は去年なかった？そういうの」
「そうやなぁ……、学祭の『Oh,my happiest day!』が終わって
役員が交代して色々掛け持ちすることになって、って
色々忙しくしとったからなぁ。
やから「二十歳やぁ！」みたいなんはなかったんちゃうかな。
「よーやく酒が飲める！」とは思っとったけど(笑)」
結「ふふっ、さすが酒門(笑)
……やっぱり、考え過ぎてるだけなのかな」
「そうかも知らんなぁ。
『欲動』書いて後輩の面倒見てってちょっとお疲れなんかもよ？」
―お待たせしましたぁ、カシスオレンジとハイボールです！―
「あ、どうもぉ。はいどうぞ」
結「ありがと、」
「やけどちゃんと先輩もやれてるやん。
大晴かわいがってんねやろ？
結城が珍しく自分から絡んどったから意外やったけど
ちょっと安心したで？」
結「ふふっ、私もそう思う(笑)
だけど、大晴くん見てるとなんか元気出るって言うか、」
なみなみと注がれたジョッキを今度は遠慮なく口に運びながら、
うまく言葉に出来ひんみたいで首を傾げる結城の頬は
さっきより赤みを帯びとって。
酒に酔ってるからか。
それとも、
なんてしょうもないこと考えながら飲んだ酒は
さっきよりアルコールがきつく感じた。
「……えぇな、」
結「え、何が？」
「いや、なんでもない」
あかんな、まだ2杯目やのに。
ぽろ、と口をつく本音を酒でぐっと流し込んだ。
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作者名：マリア | 作成日時：2023年8月18日 15時
