▼〇二十歳ノイローゼ。‐Blue. ページ13
・side.Yoshinori
「食べへんの？」
結「えっ……あぁ、ごめん」
ついこの前、お誕生日やったべっぴんさんは
物憂げな
目の前に取り分けたお好み焼きもぼちぼち冷めてまいそうで。
「無理そうなら俺がもらおか？」
結「ううん、食べる。正門が焼いてくれたから」
「そう？」
結城は出会った頃からどっか繊細で、
触れたらそのまま手折ってまいそうな性格の子やったし、
今も食欲ないくせに「作ってもらったから」って
一生懸命もぐもぐ食べてるんは
いじらしいくらい健気で、
まぁ、そういうとこも結城のえぇとこではあんねんけど。
「あと2週間もしたら七夕公演やし、
倒れへんように体力つけときや？
俺でよかったらいつでもご飯付き合ったるから」
結「うん、……ごめんね。正門」
「なにが？俺は全然迷惑してへんよ」
そう伝えてみても本人は気にしてるんか
目線を下げるばっかりで、
今日は“そういう日”なんやろうなぁって
頬杖をつきながら生気の薄い頬を観察する。
「そういえばもうお酒飲んだん？」
結「ううん、まだ飲んでない」
「あらら、せっかく大人になったのにもったいない。
こんな時はアルコールの力に頼るんも一手やで？」
ウーロン茶のコップをそれっぽく振ってみせたら、
くすっと小さく微笑んで「酒門、」と呟く結城。
よかった、やっと笑った。
今日初めて見せてくれた笑顔に思わずほっとした。
結「お酒って美味しいの？」
「飲みやすいんもあんで？
カシス系とかカルーア系とかジュースみたいやし。
女の子ってそういうのよぉ飲んでない？」
結「さぁ、正門と飲んでる女の子はそうかも知れないけど」
「なに、やきもち妬いてるん？」
意地悪い言い草する結城をじっと見つめたら、
降参、と言わんばかりの顔してふいっと目を逸らされる。
ふふっ、やっぱかわえぇなぁ。
ニマニマする顔隠しながらメニュー表を開いてみせて、
「お酒、飲んでみる？飲めへんかったら俺が貰うから」
結「じゃあ……、正門のおすすめを教えて」
「俺？俺が好きなんはアルコール強めやから
あんまおすすめできひんけどなぁ(笑)
じゃあ、ファジーネーブルとか？
あれならあんま当たり外れないやろうし」
結「分かった、じゃあそれを飲んでみよっかな」
「了解」
店員さんに注文を通したら、
ちょっぴり緊張した顔してる結城がかわいくて
また緩む頬を手の内に隠した。
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作者名：マリア | 作成日時：2023年8月18日 15時
