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こじけんに引きずられながら1個下の階に降りたら、
上の階のがやがやが嘘みたいに、しん、としとって。
「……ほんま、意味わからん」
踊り場の壁に凭れかかるように
ズルズルしゃがみこんだら、
健「ちょ、たいせー重いって」
とか笑いながら
こじけんも「よいしょ、」って隣に座った。
健「さてと、何分トイレ行ったことにする？」
「……こじけん、ごめん」
健「なにが？」
「なんやろ、なんなんやろな……」
健「さぁ、何なんやろうなぁ」
「俺、めっちゃ混乱してるんやと思う……」
なんで2人でおったん？とか、
なんでユキさん泣いてたん？とか、
なんでまっさんはキスしたん？とか、
2人の関係もよぉ分からんし、
咄嗟に逃げた自分もよぉ分からんくて。
さっき舞台の上でもちゅーしとったやんけ。
中坊の初恋とちゃうんやし
そんなん気にせんでもえぇやんって分かってる。
それは分かってんねん。
やけど、
「うぅっ……」
なぜか涙は溢れてくるから。
健「しんどいよなぁ、恋って」
ぽつり、とこじけんが呟く。
「これ、恋なん……？」
健「さぁ、知らんけど」
なんやねん、こっちは真剣に悩んでんのに。
こじけんの右肩を軽く殴ったら、
「いたぁ」って全然思ってもなさそうに言うから
ちょっとだけ涙も引っ込んだ。
「……俺な、説明会の時に一目惚れしてん」
健「おん、」
「タイプやって、ずっと見てたいって思って」
健「うん、」
「そんで演劇部入って話してみたら、めっちゃ優しくて、
けど脚本の話する時とかは真剣で、
譲れへんとこあったら先輩にもちゃんと意見言って。
この人ほんまに演劇好きなんやなって、」
健「そうやな、」
「ユキさんのそーゆーとこが好きやな、って思って……」
傍にいたいって思った。
優しいユキさんが好きやし、
綺麗なユキさんに一目惚れしたけど、
今はそれだけやなくて。
ユキさんが考えてることとか何が好きとか全部知りたい。
ユキさんが好きなことを一緒にやりたいし、
元気がない時は俺がいっぱい笑顔にしてあげたいって、
健「それが恋やろ、」
「そっか。……これが恋か、」
やったら恋ってサイアクやな。
なんて強がってみても涙は止まらんくて。
健「えぇよ、気ぃ済むまで泣き。
肩ぐらい貸したるわ」
「ありがとぉ……っ」
いつの間にこんな好きになってたんやろうな。
“たかが一目惚れ”
そう思ってたはずやのに。
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作者名：マリア | 作成日時：2023年8月18日 15時
