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「大変そう、末澤君も」

結「土日の公演はOBもけっこう観に来られるから

 挨拶回りも忙しいみたいで、

 リチャ君に「代わってやぁ」って駄々こねてました(笑)」

「ふふっ、想像つくなぁ。その場面(笑)」


多分すごく鬱陶しそうな顔して、

だけど「頑張りや」ってジュースとか奢ってるんだろうな。


私が知らない演劇部のリチャ君情報を

ユキさんから何個かリークしてもらってる間に

気づいたらロビーに並ぶ人の数も増えてきて。


これ以上長居するのもあれだからって

ユキさんにお礼を言って早めに会場に入った。



「もうけっこう埋まってるなぁ……」



独特な緊張感が漂う客席をちらっと見回したら、

真ん中より前寄りの正面席が空いてて

ラッキーって人いきれの隙間をお邪魔して座る。


舞台袖から客席見てる時もあるって言ってたし、

もしかしたら来てるのバレちゃうかな?


そう思ったらまるでいたずらっ子にでもなった気分で。


黙って来ちゃったけど、

終わったら「公演観たよ」ってLINEしてみようか。


そんな事を企みながら、

しばらくお役御免になるスマホの電源を切った。







―ありがとうございましたぁっ!!―



もわっとした熱気に包まれてた会場を出たら

ロビーには微かに雨の匂いがして、


あれ、ちょっと降ってるのかな……?


念のため持ってきた折り畳み傘を出そうか

真っ暗な窓の外を覗いてたら、



リ「清風、」


好きな人のシルエットが窓硝子に映って振り返ると、

「来とったん?」って優しく微笑んでるリチャ君。


「リチャ君。ビックリした?」

リ「いや、末澤から聞いた。『清風ちゃん来てんで』って」

「あ、なるほど」


末澤君に口止めするの忘れてた、って

イタズラの反省をしてたら、


リ「ミーティングあるから外までやけど送るわ」

「いいの?」

リ「別にえぇよ(笑)」


「行こ」ってまだ賑わってるロビーから階段を下ったら

さっきまで分からなかった雨の音が踊り場にしとしと響く。


リ「傘持ってる?」

「うん、折り畳み持ってきたよ」

リ「ならえぇけど。夕飯はもう食べたん?」

「ううん、帰ってから食べる。

 昨日そうめん買ったから今年初そうめんしようと思って」

リ「お、えぇやん」


いつもよりゆっくり歩きながら、ぽつぽつと何でもない話をして。


ミーティング終わったら末澤君達とご飯行くのかな?


もし何もないなら、なんて

期待しちゃう左手にリチャ君の体温が少し掠める。

・→←★〇イタズラ心はキミにだけ-Yellow



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作者名:マリア | 作成日時:2023年8月18日 15時

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