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★〇イタズラ心はキミにだけ-Yellow ページ1





「わぁ、大盛況……」



土曜の夕方なのに人がたくさんいるロビーを見て

つい、そう呟いてた。


―ご来場ありがとうございます。学生の方ですか?―

「はい、」

―ではこちらに学科とお名前をお願いします―


受付のお姉さんから筆ペンを受け取りながら

リチャ君がないかちらっと確認。


……やっぱりいないか。


2年生が中心の公演だって聞いてたけど、

裏方のリーダーだもんね。

きっと今頃、舞台裏でバタバタしてるんだろうな。


ちょっとだけガッカリしちゃった気持ちを切り替えたくて

少し気取った行書体で名前を書いてみたら、


―社会学部社会学科の清風さん……、あっ、―


「もしかしてリチャ君の、」って

遠慮がちにそう言ったお姉さんと目が合って、


「あ、……リチャ君がお世話になってます」


いかにもな台詞が照れくさくてちょっとニヤける。


やっぱり、リチャ君がいなくてよかったかも。


こんな顔見られたら、

「なにその顔」ってきっと呆れられちゃうから。



―あの、先日は題字を書いてくださって有難うございました。

 直接お礼を言いたかったのに遅くなってすみません―

「あ、いえいえ。拙筆ですがお役に立ってよかったです」

―そんな!すごく素敵でした。

 作品のイメージがそのまま宿ったような艶っぽい字で。

 お願いして本当によかったって同期とも話してました―


丁寧にお礼を伝えてくれるお姉さんの

綺麗な黒髪がさらりと揺れて、

あ、って思い出したお名前。


「確か、ユキさんでしたよね?」

結「あ、はい。そうです」


「知ってくださってるんですか」ってたおやかに微笑むお顔は

同性だけど見惚れるくらい本当に美人で。


「リチャ君が『とんでもない美女がおる』って言ってて」

結「あらら、お恥ずかしい」


へにょん、と眉を下げてはにかむユキさんを見ながら

女優だったら絶対看板だったんだろうな、なんて

勝手な想像をしてたら、


誠「あれ、清風ちゃんやん」

「あ、末澤君」


賑やかな人だかりから出てきた末澤君が

わざわざこっちまで来てくれて、


誠「観に来てくれたん?

 リチャ、何も言うてへんかったけど」

「うん、誘われてないけど勝手に来ちゃった(笑)」

誠「ははっ、えぇやん。嬉しいわ(笑)」


くしゃって猫みたいな顔で笑ったら

「じゃ、楽しんでってな」ってまた人だかりに戻ってく末澤君。


OBらしい年上の人に挨拶してる姿は

やっぱり部長さんらしくて、すごく凛としてた。

・→



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作者名:マリア | 作成日時:2023年8月18日 15時

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