キミに恋するワンシーン！第12章！

〇続・“女心”を教えて。-Yellow ページ5

・


リ「清風、“女心”って何なん？」

「……あれ、前にも似たようなこと聞いてなかった？」


似たような、というかそのまんまだったような。


リ「したかも知れへん、けどまた教えてほしい」

「また演劇部関係？」

リ「おん。しかも今回はけっこう真剣にヤバめ」

「あらら、それは大変だね」


『就職活動の手引き』なるぺらっぺらの冊子を脇に置いて、

学食のテーブルに伸びてるリチャ君。


どうやら本当に一大事らしい。


お役に立てばいいけど、と思いながら様子を見てたら、



リ「……清風は、俺と付き合ってよかったって思う？」



唐突にそう尋ねたリチャ君の瞳はちょっとだけ揺らいでた。



「……どうして、そんな事聞くの？」



できるだけ穏やかに聞き返したら、

リチャ君はそっと身体を起こして指を組みながら

ゆっくりと口を開く。


リ「……実はな、部内で付き合ってんのがおんねんけど、

　その彼女の方が部活来ぉへんくなってもうて。

　多分、辞めるつもりなんやろうなって。

　けどそいつら2人ともほんまに舞台が好きで。

　“演劇バカ”ってくらい本気でやっとったから、

　やから、恋愛なんかって言うたらあかんのかも知れへんけど

　それで辞めるんはちょっと、嫌やな、と思って、」



ぽつりぼつりと紡がれるリチャ君の言葉は珍しく感情的で。


きっとそれだけその2人のことが好きで。

だから何か手伝ってあげたいんだろうな、って。


そんな場面じゃないだろうけど、つい愛おしくなる。



多分、恋なんてそんなものなんだろうな、だなんて。



「……ふふっ、」

リ「え、急になに？」

「ううん、自分でもクサいこと考えてるなぁ、と思って」

リ「女心のこと？」

「うーん、それも関係あるかもだけど、」


ぎゅっと組み合ったリチャ君の指にツン、と触れながら

そっと輪郭をなぞっていく。


「私ね、こう見えてリチャ君のことが大好きなんだよね」

リ「え、あぁ……どうも」


恥ずかしいのか素っ気ない返事をするリチャ君。


こういう時「もっと反応してよ！」って言う子だって、

もちろんいるだろうけど。


「そのカップルさんのことって

　正直、私に直接関係のない話じゃない？

　だけどリチャ君がその2人のことが好きで、

　心配してるって分かるから、

　私も力になりたいなって思うの。

　“リチャ君が好きだから”ってそれだけで

　私は私に関係ない人達のために時間を使えるんだよ。

　それが恋なんだろうなぁって」

・→←・

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す